かつて、将棋のタイトル戦は三つしかなく、年に三回のタイトル戦を巡って、限られた棋士の間を行ったり来たりしていました。
日程が緩やかな中、若手にチャンスが回ることが少なく、生活の苦しさから消えて行った勝負師たちも結構いたんじゃないかと思います。
それが今や8棋戦。スポンサーが増えることで、賞金額も上がり、棋士の待遇はグーンと良くなりました。
それに伴って、若手の経験値も上がるわけです。
同じような話、ボクシングも階級が17に細分化され、団体もWBA・WBC・IBF・WBOと4つもあるもんだから、チャンスがたくさんできました。
そのおかげで、日本人の世界チャンピオンは6人もいます。
どの団体の、どの階級で、誰と戦うかを決めていくのがジムを預かる会長のセンスであり、今やボクシングは、投資と回収のビジネスなのであります。具志堅さんには難しそう。
スポ根漫画の世界では、ボクシングを取り上げるのが王道です。
『あしたのジョー』に始まって『リングにかけろ』『タフネス大地』『チャンプ』『はじめの一歩』...いろいろありました。
中でも私が好きなのは、小山ゆうの『がんばれ元気』です。今から40年前。少年サンデーの連載です。
主人公である堀口元気の幼少期から世界チャンピオンになるまでを描いた漫画で、小学校のときの担任の先生(多分一回り以上の差)へ恋愛感情を持つことを伏線にストーリーが進みます。幼いころ、身体が弱かった母親に先立たれ、マザコン気味の元気クンが、芸能界デビューして思いを寄せる同級生アイドルに目もくれないのは、筋が通っているような、バッカじゃなかろうかとも。
それよりも、自分を育ててくれるトレーナーに、これまた先立たれた父親を見出だし、心酔していく心理描写が絶妙です。少年マンガとは思えないマザコンプラスファザコンのこってり感。
登場人物がみんな優しさに溢れていて、寝る前に読むのに、とても良い作品でした。