元祖二刀流とは、先日亡くなられた関根潤三氏ですが、同氏とプロアマ通じてバッテリーを組んでいたのが根本陸夫氏。
選手としての実績は、ほとんど残しておりませんが、ゼネラルマネージャー(GM)としての力量は天下無双であり、誰もが認めるところでありました。
たとえば、常勝カープの礎を築いたのは、昭和50年初優勝の7年前に監督を務めた根本陸夫氏だと言われています。
このとき、コーチとして関根・広岡・小森と言った外様を集め、山本浩二・衣笠祥雄を一流に育て上げています。
西武の黄金時代を作り上げたのも根本氏でした。
西鉄ライオンズの八百長問題でボロボロになった球団を様変わりさせた凄腕は、誰もが認めるところ。
ベテランの田淵幸一・山崎裕之・野村克也を集めて注目を浴びると、松沼兄弟・石毛・工藤・伊東・秋山・清原と、ドラフトであるにも関わらず、その網をかいくぐって、次々に好選手を獲得していきました。
そして、ダイエーホークスの蘇生。
長嶋が巨人の監督をしている間に、王監督との日本シリーズを実現させようと、あらゆる手を尽くしています。
いずれも、自分が監督のときは、全然です。優勝はおろか、Aクラスが一度だけ。
こんな男がいたんですねぇ。
秘密は、野球界以外にも広がる人脈と卓越した洞察力、人間観察力です。
国土が広いアメリカでは、スカウトの手が回らないので、あちこちにバードドッグ(猟犬)と言われる情報網があるんだそうです。
元野球関係者だが、現在はガソリンスタンドの経営者だったり、雑貨屋の主人だったり。
そういう人たちが、こまめにレポートを送るようなシステムですが、どうやら根本氏は、これをやっていたらしい。
自分自身はほとんどお酒を飲まないけれど、人の話をよく聞くんですね。それが、広がる人脈の秘訣。
合宿所で食事を作る賄いのおばちゃんや清掃員との人間関係を大事にせよとも。
ウソのない本当の情報は、そういうところから集めやすいことを熟知していました。
『プロ野球のすべてを知っていた男 根本陸夫伝』(高橋安幸著・集英社文庫)は、故人と関係が深かった22人の証言をもとにまとめられています。フィクサーを目指した男。スケールが違っていて、見応え十分でありました。