大手の生保ががん保険を取り扱わなかったのは、認可の問題もありますが、それ以前に彼らの販売スタイルに合わなかったということです。
つまり、保険料が安過ぎて、儲けが出ない。下手にそんな保険を案内すると、本命の生命保険が売れなくなってしまうってこともあります。
自動車のセールスマンが、バイクのカタログを持たないような話です。
そして、効率の問題。
ヤクルトだって、担当エリアに企業が混ざっているから、やる気が出ます。過疎の村には、営業所すらありません。優れた商品でも、効率よく回れなければ、その気が起こらない。
がん保険だって、効率は重要な要素です。一人ずつ説得するようでは、なかなか大変。
そこで考え出されたのが、企業の子会社を代理店にすること。一本釣りじゃなくて、地引き網です。子会社であれば、人間関係で入り込むことができます。だけど、それだけだったら知れたもの。昔、お世話になったからと、数人が絡め取られて終わりです。
ところが、賢い人がいるもので、関係先の企業から人事データ(名前と生年月日)を拝借し、社員の一人ひとりに向けて、加入希望書というものを作りました。再来月から始まる契約は、保険料がこれこれで、個人タイプと家族タイプがあって、1〜4口まである。入るか入らないかにマルをつけて、週末までに窓口の誰々さんへこのカードを提出してくださいと、これだけ。
今でこそ、個人情報にうるさくなっておりますが、昔は社員名簿も平気で流出していた時代のことです。
営業マンの仕事はウソみたいに簡単で、ボンボン契約が獲れました。地引き網なので。
(つづく)