自己啓発本というのは、結構押しつけがましいところがあって、その当たり前に対し、素直になれなくなってしまうことがあります。
何でしょうね、母親の「宿題やったの?」の問いかけに「今、やろうと思ってたんだけどなぁ」って感じ。ある意味、上司から自慢話を聞かされているような気持ちにさせられます。
それは、有無を言わさせぬ一方通行だからで、教育の仕事をしていると、ときどきやらかしてしまう暴走行為であります。
聞き手の劣等感という地雷を強く踏み過ぎると、爆発するのは当然なので、正しければ正しいことほど、注意深く進めていかねばなりません。
で、この『夢をかなえるゾウ』(水野敬也著・文藝社)シリーズは、小説仕立ての作品の中に、ボケとツッコミの役割を入れ込むことで、見事に抹香臭さを消し去っています。
最初の登場は、衝撃的でした。ゾウの顔をした神様が、関西弁を喋りながら、酒は飲む、タバコを吸う、博打好きの浪費家という隙だらけの設定で、清濁併せ呑むっていう安心感を読者に与えます。そこから繰り出す正論の数々は、作者の真骨頂ともいえる表現力の技でありました。
続編は、漫才で日本一を目指す主人公が、貧乏とは何かを突き詰めていく深い内容です。反面教師として登場する貧乏神のサッちゃんが華(?)を添えています。
シーズン3は、女性が主人公。商売とは何かを説いておりました。
そして、シーズン4。家族愛がテーマなんですが、妻も子もいない私は共感できず、逆に、なるほどこれだと思いました。つまり、嬉しい楽しい苦しい悲しいの喜怒哀楽要素は、家族がいないと膨らまないっていうこと。そんなことは、どこにも書いてありませんが、勝手に気付いたのです。エライねぇ、エラくないか?
自分の中に欠落した感情があるということを今さらのように。
そう、一家団欒の敵みたいな存在の私は、解釈不能な感情の機微が結構あるなぁと。
そして、そうしたものを補うのが読書だと理解しています。
だから、ちょっと苦手だったり、よく知らないことを勉強するのは、ヤだけどやった方がいい。
自分がわかっていないってことを知るのが自己啓発なのであります。