都会のネズミと田舎のネズミ

読書ネタ、スポーツネタ、お笑いネタ、時事ネタを拾いながら、笑いの方向へと導きます。3打数1安打を目指しています。ハズレよりもアタリを読んでください。

AX

伊達直人の場合、お金持ちで運動オンチの慈善家をよそおっていたので、孤児たちからは「キザにいちゃん」と呼ばれていました。だけど、本当の姿はプロレスラーのタイガーマスク。育ててくれた虎の穴への上納金を踏み倒し、次々に送り込まれる刺客と闘い続けます。

それが、コンビニのフランチャイズだったら訴訟に発展するし、芸能事務所だったら干されるって話です。

いいことをするからと言って、犯罪に手を染めたり、信義則に反するような行為は許されないわけで、原作者が堅気でないと、こういう論法になるんですね。いや、こういう正義感ヅラは教育上、問題ですよ、『タイガーマスク』。これを認めたら、ホームレスは殴ったっていいと発展してしまいます。今だったらテレビ放映は倫理的にアウト、そう思います。

 

伊坂幸太郎氏の『AX』(角川文庫)は、それを思い起こさせるストーリーです。

主人公の表の顔は文具の営業マンで、裏の顔はプロの殺し屋。家族に知られないように、女房の尻に敷かれる気弱な父親を演じます。

一般に殺人依頼といえば、暴力団関係が浮かびますが、それとは別にこういう下請け業者も実際にいるんでしょうね。証拠を残さずに、自殺や事故死に見せるプロフェッショナル。

普通の小説は、そこに至るまでのプロセスを描くところ、伊坂氏は末端の方に光を当てました。知り合いでもいるんでしょうか、妙にリアルです。昔、保険会社で保険金の査定をやっていたので分かります。世の中に不審死は、思いの外多いです。

そして、それを生業としてしまったら、組織を抜けられませんね。言えない秘密がいっぱいくっついていますから。

じゃあ、どうするってストーリーでありまして、興味を持った方は読んでみてください。

 

私的には、75点かな? 早田隊員がウルトラマンだってことは、そばにいれば分かるハズだと思ってしまう。