入社間もないサラリーマン時代、会社で草野球をやっていました。
ポジションは、みんながやりたがらないという理由でキャッチャー。試合に出られますからね。
チームは、弱いながらも数人の元エースだった高校球児がいて、その球を受けるのは、結構楽しい時間でした。
球種のほとんどは、ストレートとカーブの2種類で、それを内外角に散らす感じ。
ところが、内角を要求しても、そんなにえげつない球を投げられるものではありません。ボールがぶつかる怖さは、実は投手の方が感じているという現実がそこにありました。軟球なんて、当たったって、どうってことないのにです。
いや、むしろ、硬式野球の経験者ほど、そうなのかもしれない。素人は、インサイドを攻めろと簡単に言うけど、覚悟を伴うものなのです。
タイガースの藤浪晋太郎投手が、右打者を迎えると、うまくコントロールできず、苦しんでいます。
打者からすれば、160キロ級の豪球をぶつけるのは、信義則に反します。だから、マウンドに上がった瞬間に、相手ベンチから異様な圧がかかるようになりました。
同期の大谷翔平を上回る素質の持ち主が、さっぱり勝てなくなったのです。
無責任な解説者は、技術的な問題だと言いますが、どうでしょう?
今季のタイガースの浮沈は、彼の復活にかかっています。
『145gの孤独』(伊岡瞬著・角川文庫)は、主人公の元プロ野球エースが、危険球で相手打者を引退に追いやってしまい、その後遺症でイップスに陥りました。結局、自分も野球から足を洗います。
その後、煩わしい人間関係を嫌って、流されるように便利屋を起業。不思議な依頼に遭遇しながら、自分の進むべき道を探ります。
そんな中で起こる、謎めいた事件の真相は?
うーん、やけくそ気味ながらも、他人に対する思いやりの気持ちが強い主人公のキャラクターに、ぐいぐいと引き込まれました。
ただし、この作者は女性の描き方が甘い。そんなに好きじゃないんだろうと、勝手に想像しました。82点。