スコアブックの集計をしていて気付いたのが、セカンドを守るDの存在です。
中学時代に野球部経験者だったとはいえ、身長160センチ体重50キロと小柄なDは、非力な上、走塁守備もイマイチで、目立った存在ではありませんでした。打率は一割に満たず三振の山、これまた貧弱です。レギュラーは厳しいと、誰もが思っていました。
ところがこの男、そもそもバットを振らないんです。小柄なせいもあって、フォアボールでの出塁が半分近い。珍しい選手です。出塁することに、価値を見出しておりました。これを使わない手はありません。
軟式野球のグラウンドは、2時間単位で借りるシステムですが、準備や片付けを考えると正味90分。大会だと、5〜6イニングがせいぜいです。
だから、最強打者が四番だと、打順が2度しか回ってこないなんてことも。
そこで、チームで一番のスラッガーBは二番に据えることにしました。
一番打者はミートが巧くて俊足のK。三番は高校球児だったS。四番には、その日に集まった中で一番大きい選手を充てるのが、我が軍のルールです。これは、相手投手にプレッシャーをかけるためのもの。上位打者があれだけ打つのだから、こいつはもっと打つのではないかと思わせるのが狙いです。
五番以降は、打率の高い順に並べ、非力なDを九番に据えました。出塁率四割を超えるDは、得点力アップの鍵を握ると考えていたのです。
グラウンドがないのでほとんど練習しないし、高校野球経験者も少なかった割には、結構いい成績を収めていました。
会社の草野球は、強制力がなく、各人の都合に応じて集まるので、毎回、メンバーが違います。
だけどそれは、麻雀の配牌から構想を練るみたいな作業でもあり、楽しんでやっていたのを思い出します。
(つづく)