人間の脳には、常に大量の情報が入ってくるため、それを取捨選択する必要があります。その役割を担っているのが、海馬です。大切な情報を保存して、いらない情報を直ちに捨て去る。
海馬は、情報を3種類に分類しています。
(1)感覚記憶 覚えなくても困らないので、数秒間で消えていく記憶
(2)短期記憶 その場だけで覚えていれば用が足りる記憶
(3)長期記憶 ずっと覚えていた方がいいので、何年も消えない記憶
感覚記憶が発達し過ぎると、容量を超えて、頭が爆発しそうになります。自閉症のような障害を抱えた人が、一度見た光景を写真のように再現する能力があるなどと言いますが、これです。いい面と悪い面とがある。人間は忘れる力があるからこそ、バランスを取って生きていけるのです。
勉強をするってことは、短期記憶として入ってきた情報を長期記憶へと転送させること。そのために、効果的な三つの方法があります。
(1)何度も書く 記憶に自信がない場合、メモを取るというのが有効であるし、単語カードの利用にも同じ効果が見込めます。
(2)意味づけする 似たもの同士をくっつけるやり方。年号の語呂合わせなども、これに当たります。
(3)思い出と結びつける 自分の周囲に起こる事例に当てはめてみます。
脳の働き方には個人差があるので、自分の特質にあった記憶術を身につけると、成果が上がります。
さて、本日のミステリー本紹介は、『あの日、君は何をした』(まさきとしか著・小学館文庫)です。
親子の情愛に潜むいびつな感情を描いた作品ですが、私は捜査に当たった刑事の写真のように記憶する特殊な能力が印象的で、注意深く追ってしまいました。いろんな人間がいるからこそ、世の中は面白いんだと。
ストーリー展開は、後味のよろしくないいわゆるイヤミスでした。屈折の度合いが行き過ぎていてちょっと。75点です。