草野球でキャッチャーをやっていた時の話です。
信じられないくらい肩が弱い私は、通算の盗塁阻止率1%(その一回は走者が転んだから)だったので、肩身の狭い思いをしておりましたが、それでもなり手がいなかったため、ポジションを確保していました。
逆の言い方をすれば、失敗するチャンスに恵まれていたのです。試合に出続けるのが結構なストレス。
そこで、生きていくために限られた資源(?)を最大に活かす方法を考えました。
それは、判定に絶対逆らわないという審判との関わり方。
イニングの合間に適宜、女性マネージャーにおしぼりや蜂蜜漬けレモンを持って行かせる。
スコアブックに目を通し、その打者の前打席から、打撃の傾向を掴んでポジションの指示を与える。
前回、三振している打者に対しては、2ストライクと追い込んだ時、敢えて大声で「もう一丁行こう!」と言いながら、ボール球になる変化球を要求する、などなど。
誰でもそうだと思うけど、打者は三振だけはしたくないという心理で打席に立っています。だから、意識過剰にさせることで余計に打てなくなります。
そういうもの。
故野村克也監督は、選手へのミーティングの際、カウントには12種類あって、投手はそれぞれのカウントで考えていることが違うということを説いていました。
これは、キャッチャーならではの視点であり、配球を読む大切さを訴えたのです。
プロの打者は、球種やコースが分かっていれば、たとえ160キロのスピードボールでも打ち返すことができるというもの。
だからこそ、サイン盗みに敏感になるわけですが、そんなことをしなくても、手の内が読めるとしたのが「ノムラの考え」です。
三振したくないという打者心理を逆手に取るのです。
これは『データで楽しむプロ野球』というサイトから。
ここに、セ・リーグの各打者のカウント別の打撃成績が載っています。
打者が有利だとされる1-2などのボールが先行するカウントでは、どの打者も当然のように3割以上をマークしていました。
問題は、1-1の並行カウントにおけるセ・リーグ球団別の打撃上位10名の通算成績です(最初のカッコ内は初球時の打率、二番目のカッコ内は2ストライク時の打率)。
広島 209打数96安打 .459(.317)(.223)
巨人 193打数69安打 .358(.381)(.205)
ヤクルト 195打数65安打 .333(.340)(.199)
DeNA 236打数73安打 .309(.381)(.213)
阪神 229打数65安打 .284(.372)(.203)
中日 232打数60安打 .259(.322)(.201)
広島の打者は、菊池(.462)西川(.517)坂倉・林(.500)小園(.393)と軒並み高打率で、鈴木に至っては30打数19安打の.633。リーグ最高打率をマークしています。ここまで徹底されていると、何かウラがあるように思います。
それは、配球からの読み。何かチームとして掴んでいるのでしょう。
ストレートへヤマを張りがちな初球時の打率は、各チームとも似たようなものですから、これは何かあるに違いない。
カープは、2ストライクと追い込まれてからでも微差ながら一番です。これだって、読みの打撃。
だからこそ、打率リーグトップの成績を残しているのです。
残念なのは、ボール球の選球眼についての指標でありました。
ボール球をしっかり選んだ割合のチーム別データは、以下の順になっています。
ヤクルト 4,951球に対し3,921の選球 79、20%
巨人 4,270球に対し3,361の選球 78、71%
DeNA 4,550球に対し3,462の選球 76、09%
阪神 4,985球に対し3,743の選球 75、09%
中日 4,266球に対し3,148の選球 73、79%
広島 3,818球に対し2,804の選球 73、44%
広島の打線は、ボール球に手を出しやすい。それが、ヒットが出るけど点が入らない理由です。
得点圏に走者が進んだら、相手バッテリーがボール球で勝負してくる様子が浮かびます。まんまとハマる。
自分たちも分かってるんでしょうね。そもそもボール球の選球が少ない。対照的に粘っこいヤクルト打線が際立ちます。
何故そうなってしまうのかは、分かりません。引き続き、研究中です。