都会のネズミと田舎のネズミ

読書ネタ、スポーツネタ、お笑いネタ、時事ネタを拾いながら、笑いの方向へと導きます。3打数1安打を目指しています。ハズレよりもアタリを読んでください。

トリックorトリート(2010/4/20・21分改題)

「年に一度なんだけど、子供が回ってくるんで、お菓子を用意しとかなきゃいけないんだ」
   「エッ、それ、何のイベントですか?」
「“おだいしさま”っていうんだけど、何て言えばいいのかね、このへんの風習よ」
   「子供が回るって、どこを?」
「だから、あちこちにお地蔵さんがおるんよ。そこでお菓子を渡す。昔からの決まりごと、4月21日」
   「えっ、オリエンテーリングみたいなことですか?」
「そうそう、集落ごとに当番があって、21日はずっとおらにゃあいけん」
   「じゃ、学校は休みなんですか?」
「休みにはならんやろ。学校が終わってから、子供が出かけてくる。そのために、100円ぐらいのお菓子を用意しておくんだ」
   「面倒くさいですねぇ」
「そうよ、面倒なんよ、ワッハッハ」

地元の長老Tさんの説明ですが、なんだか要領を得ない。
ネットで調べても、4月21日にそれらしい行事もないし…。
だけど、このへん(下関市豊田町)じゃ、常識らしいのです。4月21日に合わせて、そういう(?)準備をすること。


もうちょっと若い人に聞いてみましょう。

「あぁ、10円持ってお参りするんです。そうすれば、お菓子をもらえる。子供のころは、楽しみにしてました」
   「それ、なんていうの?」
「なんて、言うんでしょう?神様だか、仏様だかのお参りで、確か“お接待”と言っていたような」
   「10円でいいの?」
「ハイ、いいんです。子供ですから」
   「なんだか、パチンコの景品交換みたいだね」
「あっ、そんな感じなのかもしれない(笑)」

郵便局窓口勤務の彼女もそのイベントの中身を詳しくは知りませんでした。

 

もう一度、“お接待”をキーワードにインターネット検索。
すると、ありました。どうやら、西日本に定着した風習で、お遍路さんの亜流のようです。
“おだいしさま”とは、弘法大師のことらしい。
“お接待”は、お参りする人に向けられたおもてなしの心という意味。
ふ~ん、子供の接待ねぇ。教えるんだ、そんなこと。

いわれが分からないのに、決まりだからと言って従うのは、いかにも田舎らしいスタイルですね。
結局、それは平凡な日々をちょっとだけ変えるために、誰かが決めたのでしょう、オリエンテーリング
そうやって集まっては、大人は昼間から酒を飲む。なるほどねぇ。
田舎の近所づきあいは、年功序列や男尊女卑があって、味わい深いのであります。

百聞は一見にしかずと、Tさんが参加している豊田町八道の祠(ほこら)へ。

すると、ありました、道路沿いの一角に。ゴザが引かれて、お年寄りが集まっているので、すぐ分かります。

このお参り、子供だけじゃありませんでした。オトナも参加あり。相場は100円らしい。
祠の中には、人形が飾ってあり、どうやらこれが本名佐伯眞魚(まお)の弘法大師
でもねぇ…どう見てもおひなさまなんです、男女のペアが。

これ、誰かがテキトーに作ったような気がします。
だけど、拝んでるほうもテキトーで、手を合わせる顔に中身がありません。しょせん、子供なので、分かるハズないでしょう。形だけ。

   子供:「(声を揃えて)お参りさせてください!」
   集落の代表:「ハイ、ご苦労様です」

このなんともいえないわざとらしいやり取り、なかなかいい景色でありました。
目的は、お菓子を貰うこと。用意した分が片付くこと。予定調和です。
これ、都会だったら、違和感があるでしょうね。
田舎ののんびりした景色の中でのみ、成立するような気がします。


別れを告げて、帰路につく途中、左折しようとしたところで、見知らぬ女性に呼び止められました。

   「あのぅ、もしよかったら、お参りしていってもらえませんか?」

予備知識がなかったら、ビックリしたでしょうが、最早予習も復習もバッチリです。
今度は、積極的にお参りに参加です。
こちらのおひなさまは、家の中に飾ってありました。
毎年、持ち回りなんだそうです。こういうお手軽タイプもあるんだ。

誰に何を拝んでいるかは、よく分からないまま形を整えます。
お金を置いて、お菓子をもらう。付き合いですからねぇ。

支払いは、見栄を張って千円。お返しは、ヤマザキナビスコうすしおポテトチップスふた袋。
ここに、小規模なキャッチセールスを体験した次第です。安くてよかった!?

 

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これは、10年前のブログから。

日付けは違うけど、仕組みはハロウィンと一緒。世界中で似たようなことを考えるのであります。