夫を殺害しようと思えば、長期戦略をもって、毎日の食事に少しずつ悪いものを加えていくという方法があります。
和歌山カレー事件みたいな話。あの場合はヒ素でしたが、そんなんじゃなくても身体を蝕んでいく物質はいろいろありますから、夫婦になるってことは、それなりの覚悟がいるものです。
『傍聴者』(折原一著・文藝春秋)は、そんな展開で、木嶋佳苗っぽい女性が関わった男性を次々に練炭自殺へと追い込んでいきます。濡れ場の表現が昭和のビニ本みたいな低俗さで、読まなきゃよかったなぁと思いつつも、ついつい最終章へと辿り着いたところ、意外などんでん返しがありました。10対0で負けていた最終回に6点取り返して、なおも二死満塁で、最後の打者が痛烈なサードゴロって感じです。結局、ダメなんだけど、79点。