ミステリーのジャンルに叙述トリックというのがあります。
これは、読書の先入観を利用して誤った解釈に導いていく手法で、有名なのがミステリーの女王とされるアガサクリスティの『アクロイド殺し』です。ネタバレになってしまうけど、犯人はストーリーの語り手である作者だったという話。
本格的な推理ファンからすれば、肩透かしを食った感じで、モヤッとします。闘った相手は、読者なんかい!
これは、横綱が張り手を使っても良いのかという論争にも似て、意見の別れるところではありますが、そういうのも含めて理解できるようになれば、楽しみの幅が広がるとも言えるでしょう。
このジャンルの第一人者が道尾秀介です。
終盤における大ドンデン返しに拘りを見せ、サイコパス・ホラーがお手のもの。イヤミスと言われる後味の悪さが残る作品も多く、嫌いだと思う読者も少なくないと思います。クセがすごいんです。
正月早々、手にしてしまったのが『いけない』(文藝春秋)です。
コシマキのコピーに「王様のブランチで大反響」と書かれていたのに釣られたのですが、これがもう…意味がよくわかりません。
読み終えて呆然となり、ネット検索に書かれた解説をチェックしても、謎が深まるばかり。いや、ネタバレ解説している人も、多分こういうことだろうとハッキリせず、モヤモヤが広がります。
本当のところは、作者が開示しなければわからないんだけど、それじゃ手品でネタ明かしをするようなもの。
そのまま放っておくのもまた、イヤミスってことらしい。
だけど…
この不完全燃焼は、身体に良くありません。
すっごく賢い人には、メチャクチャ面白いかもしれませんが、う〜ん、私は30点。ストレスが溜まりました。いけない。