自分がお墓のことを考えたとき、妻は必ずしもそこに入りたいとは思っていない。
他人の子供が生まれた写真を見せられて、そんなに喜べるものでもないし、ましてや可愛いだなんて思わない。
会社の面接試験は、形の上ではお見合いに似ているが、立場が対等でないところが気に入らない。
父として、夫としての役割から解放される単身赴任は、実は快適だったりする。
マイホームに自分の書斎を持とうなんて、夢のまた夢である。
仕事か結婚かを考えるとき、その時機に何が起きているかによって、結論はどうにでも変わる。
少子化の時代では、孫の取り合いが起こる。私立中学へ行かせたがるのは、闘いの延長線上にある。
離婚しようかなという相談を異性にしてはいけない。九割が賛成するからだ。
転職について真剣に考えるタイミングでは、妻も同じように新しく仕事を始めたいと思っている。
自分の嫁が母親の介護をしているとき、汚くて憎たらしい赤ちゃんを育てているようなものなので、いろんな配慮が必要なのは間違いない。
清水義範の『人生うろうろ』(中公文庫)は、人生に起こるさまざまな転機、節目、大イベントなどを取り上げて、シニカルに描いた作品です。
「墓を作る」「出産」「就職」「単身赴任」「マイホームを持つ」「結婚」「孫狂い」「離婚」「転職」「老人介護」
それぞれの局面で起こるアルアルな設定は、お笑い芸人のコントを見ているようでもあり、とても楽しめる短編集です。ホームランはないけど、三振しないアベレージヒッターの真骨頂でした。87点。