シーズン前の予想を大きく裏切ってセ・リーグ2位に付けている広島カープですが、その原動力は八番を打つ上本崇司選手です。
プロ入りは2012年であり、球歴10年のベテランは、いわゆるユーティリティプレーヤーとして、内外野のどこでも守れ、一時はキャッチャーに挑戦したほどの器用さを持っています。それだけに、あくまでも控え選手だと思われ続けたような監督コーチからの先入観もあって、燻っていたのです。身長171センチの菊池涼介選手から「チビ」と呼ばれておりましたから。非力な打撃からも、多くは望めないと考えられていたのです。
しかしながら、彼は独特の能力を持っておりました。
それは、打席での粘り強さと常に全力疾走であること。
相手投手の力が上だと認めると、ファウルで逃げまくって、四球に持ち込みます。
今日までの15試合で四球12個及びデッドボールが2個。このスタイルは、途中出場の一打席勝負で発揮されることがなく、スタメンで3〜4回打席に立つ中でこそ、生きるやり方なんです。初めから、フォアボール狙いができるのは、余裕のあるなしだからです。それでいて、三振はここまでに4つしかしていません。
そして、全力疾走は、内野安打5本に表れています。すべてに必死さが伝わります。
その結果、出塁率がリーグトップの.466とはお見事。彼がカープの野球を変えました。
こんなに長くレギュラーを張ったことがないので、スタミナ的にも息切れするでしょうが、打つだけが野球じゃないってことを見せつけたことで、チームの雰囲気を劇的に変化させた功績は素晴らしいものです。
ヒーローインタビューで発した「やっちゃろうや!」は、シーズン前の解説者たちの最下位予想に反発したもので、ひょっとしたら今年の流行語になるかも。苦労人だけに頑張ってほしいです。