都会のネズミと田舎のネズミ

読書ネタ、スポーツネタ、お笑いネタ、時事ネタを拾いながら、笑いの方向へと導きます。3打数1安打を目指しています。ハズレよりもアタリを読んでください。

野良犬の値段

百田尚樹という人は、もともと『探偵ナイトスクープ』の放送作家を務めるなど、バラエティ路線で真価を発揮しておりました。番組の企画である「日本全国アホバカ分布図」の制作にも関わっていて、当時はお笑い関係者と認識されていたのです。

それが、いつのまにか小説家に転向して『永遠の0』『海賊と呼ばれた男』などのヒットを飛ばし、一躍大作家への仲間入りしました。いっときは、NHKの経営委員にも選ばれています。番組を支える放送作家だったことを考えると、異例の大出世です。

私は百田氏の極端な右翼思想が苦手で、興奮すると攻撃性が増すキャラクターが性に合わないため、話題となった作品や映画を見ることなく過ごしてきましたが、その彼が初めてミステリー小説を手掛けたと知り、どんなものかと読んでみることにしました。

 

『野良犬の値段』(百田尚樹著・幻冬舎文庫)は、ホームレスが主役となった劇場型誘拐事件というのが斬新で、マスコミの存在が如何に身勝手であるかを辛辣に描いておりました。彼が持つメディアに対しての昔年の恨みを晴らしているようでもあり、落日の新聞とテレビの痛いところを容赦なく突いています。

SNSは、警察組織を凌ぐ捜査能力もあり得るし、メディアなんかよりも爆発的な浸透力があることを認識させられました。

筋立てが緻密に計算されていて、後味も良し。これ、オススメです。女っ気がないのをちょっとだけ割り引いても94点。