7/2のブログで、宮部みゆきの小説を評して、説明と描写の違いについて触れています。
これは味わい深い視点であって、そういう目で見ると、多くの作家が説明に終始しているのがわかります。
ここのとこ、その辺に気をつけて読むようになりました。
「Aは神経質だ」が説明。「Aは自分の決めた場所に収まっていなければ落ち着かない」が描写。後者の方が、文章に奥行きが出ると言うか?コクがあるようなイメージです。
警察小説の第一人者である堂場瞬一は、読売新聞出身であり、多作を誇っています。書くのが速いらしい。
今回ご紹介の『錯迷』(小学館)は、着任する女性前署長の不審死の謎を解く中で、協力者を得られないまま、孤独の秘密捜査を始める新任のエリート署長を巡り、忘れ去られた過去の未解決殺人事件との関連が浮上するという話。わかりやすい設定で、テンポ良く進んでいく展開には惹きつけられるものの、何か薄っぺらい感じがするのは、説明が過ぎる表現によるのかもしれません。登場人物に思い入れが湧かないのは、そのせいなんじゃないかな?コクがないコーヒーみたいな、そんな気がします。79点でした。