自分が将来ボケてしまうんじゃないかという漠然とした不安があります。
認知症になれば、死に対する恐怖がなくなるからいいと言う人もいますが、完全にボケてしまう前段階が恐ろしい。
だから、できるだけクスリに頼らないようにし、同じことを繰り返す生活パターンに陥らないようにする。新しいことにチャレンジする気持ちを意識的に持ち続ける…な〜んてことを考えています。
今回ご紹介するのは、第66回江戸川乱歩賞受賞作『わたしが消える』(佐野広実著・講談社)です。
ネットの書評がパッとしないので、期待せずに読み始めましたが、いやいやどうして巧みな文章力に惹かれ、アッという間に読み切ってしまいました。
警察を陰謀によって辞めさせられ、マンションの管理人となった主人公が、認知症で施設に運ばれたナゾの老人の正体を突き止めるよう一人娘に頼まれて調べていくうちに、大きな力の存在に気付かされてどうしましょって話なんだけど、社会で実際に起きた事件を重ねながら、実によくストーリーが組み立てられています。いつの間にか、主人公に肩入れしておりました。
選考委員の間では、リアリティがないと否定的な意見があったようですが、小説なんてそういう非現実的なものだと思います。私的には許せる範囲。92点です。面白かった。