ミステリーを読んでいて、これは面白いと思うのは、どういうところにあるかをまとめてみました。
(1)文章が読みやすいこと
当然ですね。歌手で言えば、声がきれいなこと。漢字とひらがなのバランスや段落の切り方、文章の短さなんかも入ります。
(2)設定に無理がないこと
状況設定は、想像の範囲を超えていないこと。そんなわけ、ねーだろと思わせちゃダメ。
(3)ドキドキとビックリがあること
最低でも「えっ」は必要。「えーっ」であれば、なお良し。伏線と回収は多いほど楽しい。
(4)主人公が魅力的なこと
登場人物に感情移入できるような小説は本物です。いないのにいるように思えるのだから、大したものです。
(5)後味が良いこと
ハッピーエンドでないにせよ、読後感は重要です。そういう意味で、イヤミスは趣味に合いません。読むけど。
そんな条件を全て満たしているのが、東野圭吾の加賀恭一郎シリーズです。
映画やテレビで、加賀=阿部寛のイメージがすっかり定着しています。なので、文字が映像に置き換わりやすい。作者もそういうつもりなんでしょう。セリフも勝手に溢れ出てくるような感じ。こうなったらシメたもんです。
本日のご紹介は『希望の糸』(文藝春秋社)。
閑静な住宅街で小さな喫茶店を営む女性が殺された。捜査線上に浮上した常連客だったひとりの男性。災害で二人の子供を失った彼は、深い悩みを抱えていた。容疑者たちの複雑な運命に、若き刑事が挑む…とあらすじはこんな感じですけど、それぞれに複雑な想いが入り組んでいます。
涙腺を刺激されました。東野作品の中でもトップクラスなんじゃないかと思います。
ちなみに、ネット検索すると小説のための予告編ムービーがしっかりと作られています。珍しい。映画やドラマ化には至っていないものの、発表されれば間違いなく話題作となるでしょう。97点。