オール巨人の弟子になりながら、半年で破門されたにも拘わらず、そのごに組んだ相棒と番組に拾われてヒッチハイクで一躍国民的スターに。
しかし、あっという間に飽きられて、上島竜兵にたかり続けるヒモ生活まで落ち込みました。
それでもアルバイトをせず、悶々としていたところ、その他大勢のガヤ芸人として参加していたバラエティ番組で、アダ名付けの才能を認められて、再び頭角を表します。何もせずに燻っていたとき、他のタレントを観察しながら、こっそり評論していたのが功を奏したのです。
そして、自身は全く板の上に立たない芸人なのに、いつの間にかそれを論評する立場へと昇り詰めたのが有吉弘行でありました。
その上がり下がりの激しさは、萩本欽一よりも振れ幅が大きく、だからこその弱い者への優しさが、隠し味になっているのでしょう。
『嫌われない毒舌のすすめ』(有吉弘行著・ベスト新書)は、コミュニケーションの取り方について、虚勢を張った毒舌を武器に相手の懐へ飛び込んでいくクリンチワークを明らかにした指南書となっています。
アダ名の付け方のコツは、外見をけなして内面を誉めるんだそうで、「やり手ハゲ」とか「センスいいブス」なんてのを例に挙げています。
もう一つ大事なのは、相手が「ツッコミ体質」か「ツッコマレ体質」かを見極めること。ツッコミ体質の人には、決してツッコんではいけない。誰にでも向かっていくのではなく、イジりやすい相手を選んでいたんだそうです。これ、いじめっ子と同じ感覚ですね。ヤクザとも通じるかも?
あと、毒舌の肝は、オープンであること。悪口はいいけど、陰口はダメだってことですね。
日テレの『有吉の壁』で、芸人の繰り出すコントについてNG評価を下しているものの、相手を不快にさせないのは、笑顔の達人である佐藤栞里を上回るオーバーアクションの笑いで毒性の中和を図っているところです。スベっているのをフォローする笑顔力が、番組の原動力であると気付かされました。なるほど、笑顔も才能なんだなぁ。