都会のネズミと田舎のネズミ

読書ネタ、スポーツネタ、お笑いネタ、時事ネタを拾いながら、笑いの方向へと導きます。3打数1安打を目指しています。ハズレよりもアタリを読んでください。

組織の盛衰

流行語となった「巨人・大鵬・卵焼き」は、故堺屋太一氏の造語だとされています。

通産省の役人時代、大阪万博岡本太郎を抜擢して太陽の塔を作らせたり、仕事の傍ら書き始めた小説『油断』『団塊の世代』が次々にヒット。

退職してからは、『峠の群像』『秀吉』の歴史小説NHK大河ドラマの原作を手掛けたりもしました。

小渕内閣では、民間人閣僚として経済企画庁長官に就任し、従来の政府の景気判断よりも景況感の変化を迅速かつ的確に把握しやすくするため、タクシードライバーや居酒屋の店主など「街角の人」に直接話を聞く「景気ウォッチャー調査」を開始します。

その後は、橋下徹安倍晋三のブレーンとして、多大な影響を与えていました。

何よりも言葉のセンスに優れ、世界的な視野を持って大きく考えることができる稀有な存在であったように思います。

 

友人に薦められて、今更ですが『組織の盛衰』(堺屋太一著・中公文庫)を読みました。

たいしたもんですね。20年以上前に書かれたにも拘らず、現在に当て嵌めて全く違和感がありません。

私が勤めていた会社は僅か7人でスタートし、毎年二桁成長を続けてあっという間に業界トップへ昇り詰めたので、それに重ね合わせて読むことができました。

企業というものは、従業員が千人を超えるまでは性善説であり続け、アットホームな雰囲気の中、お互いが利益を共有しながら成長を続けます。

ところが、千人を超えると、それが通用しなくなり、性悪説に切り変わります。

そのあたりで舵を切れず、衰退していくケースも多いんじゃないかと思います。永年の功労者の首を斬ったり、処遇を替えたりは、トップに近い人ほどできませんからね。

それが、前の会社は外資系企業であったことが大きく、米国本社の意向に沿って、大胆な人事が続きました。

トップの経営陣を外から持ってきて、共同体組織よりも機能組織であることを優先させたのです。

このあたり、シビリアンコントロールにも似て、日本社内でのしがらみが入らぬような絶妙な経営判断が行われています。

ただし、中で働く従業員にとって、バラ色であるわけじゃありません。上の蓋は、いつも閉じられているわけですから。

だけど、成長が続くのは、株主にとっては素晴らしいことです。そして、それが企業に求められている本質的な機能だということも。

いやぁ、実に面白かったです。