都会の人になかなか理解できないのが田舎の生活、カントリーライフです。
私は田舎度合いが10段階評価で3、5ぐらいの山口県徳山に6年、1、5ぐらいの蛍の里・豊田町で7年暮らしたので、都会との違いがよくわかります。
横並び意識や年功序列、親切なようでいて排他的、変えることを好まない、決まり事に従順、カレンダーに忠実、ご近所を過剰に気にする、家屋や庭にお金をかける、政治に関心が深い、田舎者だとの自覚は必要以上にある、だけど恥はかきたくない…
例えば、見知らぬ人がやって来たとき、気にしていないふりをしつつ、メチャクチャ興味を持っていたりします。
「お前は誰だ」と本人に直接尋ねるようなことはせず、周囲にしつこいほどに探りを入れるってのが不思議な習性です。ヘンなの。
豊田町には、消防団がありました。過疎化が進む田舎では、消防署が広い地域をカバーするのが難しいため、有志を募って消防団を組織するんです。主体になるのは、身体が動く若者なんだけど、いないんだ、これが。豊田町の団員は、50代が中心になっていました。
消防と言っても田舎で火事なんて滅多に起きません。
団員には、手当てがあります。役職のない人で、月額三千円程度。出動要請があれば、日額八千円、訓練だと三千円ぐらいかな。
これに加えて、集会時の飲食費補助や年に一度の旅行が楽しい。つまり、適度なサークル活動ってノリです。
忙しい人には鬱陶しいけど、そこそこ時間があれば、暇つぶしで小遣い稼ぎ。刺激の少ない田舎暮らしでは、必要とも言える活動なのです。消防団だって言えば、嫁さんも口を挟めないってこともあるようです。
不思議でした。その束縛された感じ。行政にいいように使われているんだけど、さほど不平を言わず、それなりに組織に忠誠を誓っている、それが消防団でありました。バリアを張っていた嫌われ者の私は、誘われもしなかったけど。
『ハヤブサ消防団』(池井戸潤著・集英社)は、中部地方の田舎を舞台に、今ひとつパッとしない独身の作家が都会から転居して、地元の消防団に誘われて、事件に巻き込まれていくってストーリーです。私には、いろんなエピソードが妙にリアルで、そういうのあったよなぁと思い出しながら読みました。
「厳粛なようでいて緩いところが田舎である。だが緩いようでいて、昔ながらの手順が守られているところもやはり田舎であった」
「この地区には小学校も中学校もひとつしかないので、ここに生まれ育った人は全員が同じ小中学校の出身である」
「ずっと田舎に住んでいる人は、田舎の本当の良さがわかっていない。何事も比較対象がなければ評価することはできないからだ」
「歩いている人や、すれ違う車の相手にも小さく頭を下げたりするのが田舎の習慣である。箱庭のようなコミュニティーなのである」
なんてとこ、刺さりました。田舎あるあるです。
だけど、池井戸氏の文章は、スピード感に欠けているような気がします。なんか間伸びした感じ。なので、一気にグイグイと読み進むようにはならない。
それと、男子校っぽいストーリー展開も物足りないなぁ。79点です。