都会のネズミと田舎のネズミ

読書ネタ、スポーツネタ、お笑いネタ、時事ネタを拾いながら、笑いの方向へと導きます。3打数1安打を目指しています。ハズレよりもアタリを読んでください。

マシュマロナイン

『忍者に結婚は難しい』ってバカバカしいタイトルのドラマが始まっています。

原作は誰だろうと調べたら、『再会』で江戸川乱歩賞を受賞したミステリー作家・横関大でした。『ルパンの娘』もそうらしい。路線、変えたんだと思いながら、彼の作品の書評を探っていたら、『マシュマロナイン』(角川文庫)を見つけました。三流私立高校の相撲部員たちが、そっくり野球部に転籍して甲子園を目指すんだと。肩が凝らなそうなプロットなので、読んでみようとAmazonで入手しました。

いやいや。設定がしっかり練られています。

ワンマンである校長から、無理矢理に野球部の監督を任されたのは、元プロ野球投手で体育教師を務める主人公。

そこの相撲部は、全国レベルの強豪校であったものの、部員による暴行事件で無期限の活動停止に追い込まれてしまいます。生徒たちを遊ばせておくのはもったいないと、活動実績もグラウンドもないにも拘らず、全員を野球部員として鍛えるように命じられました。その高校は、少子化の影響で、定員割れするようになり、共学に制度変更するも女生徒がサッパリ集まらず、むしろ辞めていく始末。野球で名を挙げて、経営環境を大きく改善したいというのが校長の浅知恵です。元プロ選手の指導であれば、甲子園出場も可能であると簡単に考えているようです。

面白いねぇ。全員が100kg超えの大型野球チーム。見てみたい。

ドラマで『ROOKIES』ってあったけど、あれはもともとが名門野球部でしたからね。本作のマシュマロナイン(通称M9)の場合、ほとんどが野球経験ナシからの挑戦なので、無謀としか言いようがありません。キャッチボールすら成立しないので、ゴロもフライも取れない。何より、足が異常に遅いため、ヒットを打ってもベース到達が間に合うかどうか。バッテリーだけは経験者で、何とか形になっているんだけど…

しかしながら、ビックリするほど可愛い監督の娘がその高校へ転校してきてマネージャーとなり、部員たちがやる気になりました。

そして、練習では守りや走るのを諦めて、打つことだけに専念させる。10点取られても11点取ればいいと、ビッグベースボールを宣言します。

もともと相撲では全国レベルの部員たちなので、運動音痴というわけじゃありません。ましてやパワーについては折り紙つきです。

それで、快進撃が始まります。

…んなわけ、ないだろうとツッコミながら、あっという間に読み終えました。

横関さん、高校生たちの会話が昭和ですよ。悲しいほどに若さがないのが陳腐です。もっともROOKIESの役者たちも、まるで高校生に見えませんでしたけどね。野球の知識も浅いのが残念でした。文化系の文章は、躍動感がない。

だけど、なんと言っても設定が面白い。面白過ぎました。なんだかんだで85点。後味爽快な胃もたれしない小説なのであります。