高度成長の時代、日本の家電メーカーや自動車産業は、世界のトップを走っていました。
それを自覚した上で、技術革新がどんどん進み、ほとんど使うことがないような細かな仕様が加わって、他国の追随を許さない家電製品にこだわりながら、自信を持って作り続けていきます。
中国や韓国など後発の会社は、極めてシンプルな機能しか持たない、だけど価格の安い製品づくりで対抗しました。
その結果、コスト競争で惨敗した日本製の家電業界は、国内でしか売れず、ズルズルと衰退していったのは、周知のとおりです。政府のエコポイントなんて延命措置も、方針を遅らせる逆援護射撃となったのは、皮肉な話です。
自動車業界が、電気自動車へ舵を切る判断ができなかったのは、レースで気持ちよくトップを走っていたところ、2位グループが違う道を進み始め、気がついたらスゴい差がついてしまったということ。エコカー減税ってのも、役に立ったとは言えません。
いずれも時代から取り残されて化石化するようなマーケティングの事例であり、こういうジャパニーズスタイルを自虐的に「ガラパゴス化」と呼ばれたりしています。
相場英雄の『ガラパゴス』(小学館文庫)は、2000年代はじめの小泉政権時代に起こった派遣労働の規制緩和やリーマンショック時の派遣切りを題材としたサスペンスミステリーです。私は保険会社に勤務していて、派遣社員との接点もそれなりのもので、極端に差別的なことは感じていませんでしたが、工場勤務などいわゆるブルーカラーにおける派遣労働は、タコ部屋に通じるような厳しい環境があったようです。いや、外国人労働と全く同じだわ。同一労働、同一賃金、なるほどねぇ。単純作業だとその不平等さを余計に感じるもんですわ。
作品の中では、実在する企業を思わせる会社が、その所在地も含めてポンポン出てくるので、こういうのはテレビドラマ化できないだろうと思っていたら、NHKBSドラマで2回にわたって放映されることになりました。そうか、NHKか。
初回は昨夜でしたが、再放送が今週土曜15:30〜17:00にあります。後編は、13日(月)21:00〜22:30。