多くの小説は、まず、単行本として世に出され、落ち着いたところで文庫本に収まります。
話題作なので、すぐに読みたいと思えば単行本ですが、値段が高めなのと、サイズが大きいのが欠点です。
文庫本の良さは、持ち運びが便利なので、どこでも読めるってとこと、何と言っても書評がくっついているところがいい。
映画を見終えてから、感想を言い合うようなもので、それを読んだ他の人がどんな風に感じたかを知るのも醍醐味の一つです。
書評の第一人者が北上次郎です。
本名、目黒考二。『本の雑誌』の編集者で、椎名誠のポン友であり、活字中毒者として知られています。かなりの変人だけど、観察眼は確かなもので、角度の違うたくさんの視点を持ち合わせています。そんな彼が、文芸作品の評論を行うときに使うペンネームが北上次郎なのです。
宮部みゆきの『魔術はささやく』(新潮社)の書評は、北上次郎が書いていました。
この中で、宮部作品の凄さについて、「退屈な小説は、主人公から脇役まで登場した途端に、それがどういう人物であるのか、生い立ちから性格までたちまち見えてしまって発見がないものだが、〈説明〉と〈描写〉の違いをわかっている宮部みゆきの小説には、そういうことは滅多に、いやほとんど起こらない…巷にあふれている小説の大半は、〈描写〉より〈説明〉を中心にしているのだ。あるいは、〈描写〉を指向しても力量不足のために結果として〈説明〉に堕ちてしまう」と語っています。
う〜ん、半分くらいしか分かんないけど、この感じが書評だなって思います。なんだか凄い。
で、肝心の本体ですが、次々に起こる不幸の連鎖に最後まで馴染めませんでした。人物に共感できないと、ちょっとねぇ。78点。書評はメチャメチャ褒めてましたけど。
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1月19日、北上次郎氏が肺がんのため、76歳で亡くなりました。
書評も良かったけれど、『本の雑誌』の発行人として盟友の椎名誠とふざけながら働いている感じには、楽しそうでいいなと少なからず影響を受けました。76歳かぁ。もうすぐなんだよなぁ。