北川悦吏子という作家は『あすなろ白書』をはじめ『ロングバケーション』『ビューティフルライフ』『オレンジデイズ』など、高視聴率ドラマの脚本を手がけ、「恋愛の神様」と称されています。
書いた本の内容が面白いのはもちろんですが、そのドラマに起用する役者が的確で、作品性のレベルを上げています。
そこのところ、平場の作家と映画やドラマの脚本家との違いです。美味しい料理が作れるだけでなく、お店の場所やスタッフ、それに器にも拘ったりするのがヒットメーカーたる所以。そういうのを見るにつけ、マーケティングで重要なのは情報アンテナと観察力だなぁと改めて思ったりするのです。
テレビ東京が開局60周年を記念して作られたドラマ『生きとし生けるもの』は、出色の出来栄えでした。
手術に失敗して将来を絶望した医者が、余命いくばくもないがん患者を連れて旅に出るロードムービーという展開。いずれも使い古されたテーマであり、ほとんど捻りなく、剥き出しのままに進んでいくのですが、病魔に冒されて苦しむ渡辺謙と投げやりになりつつも優しさが滲み出る妻夫木聡、それに年齢を重ねても初恋の女性を演じ切る原田知世と不幸な芝居が天下一品の満島ひかり。これ以上ないと思わせるキャスティングです。
北川悦吏子は自身の長い闘病生活が投影されているようで、病人の行ったり来たりする不安な気持ちの揺れが的確に描かれていました。
TVerでは、今日までしか観られないけど、間に合えば是非!オススメです。