本日は、「稽古始めの日」なんだそうです。
その昔、小学校一年生のミナちゃんに私の姉がピアノを教えていた関係で、家庭教師をやらないかと誘いがかかりました。
姉の話によると、ミナちゃんは非常にユニークな娘で、ドレミのドの音の下はなぁ〜にと訊いたらば、鍵盤の下を覗き込む始末だそうで、一時が万事、なかなか手強いと聞かされていたのですが、大学生にとっての家庭教師は喉から手が出るような時間効率の良さなので、二つ返事で引き受けたのです。
とは言え、言葉もままならない一年生に勉強を教えるってのは、簡単じゃありませんで…
父親が貿易商であるミナちゃんの家は、シックなデザインのデジタル時計ばかりで、アナログの文字盤表示のものがなく、当然のように時計を読むことができません。
ディズニーのアニメは見放題らしいんだけど、絵本の類は一切与えられていないようで、文字を読む習慣がない。会話はマセてるんですよ。喋りはしっかりしている。だけど、何かが欠落しているような気がします。
極め付けは、足し算のお勉強。指を使わないと進まないんです。だから、5以下同士の足し算は完璧に出来る。と言っても、その指を顎に当てて、一つずつ数える方式なので、そばで見ていると気持ち悪いんですよ。コントみたい。で、6以上の数字は指が足りなくて、足を使おうとしますが、無理ですよね。足し算ならぬ足算。
どうやら、数字に馴染みのない生活のようで、買い物ごっこもしたことがないらしい。どうする、オレ?
トランプを始めました。ババ抜き、七並べ、神経衰弱から始めて51へと。
そんなことを繰り返すうちに、少しずつ普通に近づいていったのですが、この仕事は半年で辞めました。
和楽器や日本舞踊などの伝統芸能では、子どもが習い事を始めるのは6歳の6月6日が良いとされてきました。能を大成した世阿弥が、その著書『花伝書』において、芸を始めるのは数え7歳(現代の6歳)が良いと述べていることに由来するんだそうです。
将棋界の天才たちの多くは、幼稚園から小一のころにルールを覚えたという人がほとんどで、脳科学的にもこの時期に頭を鍛えることで才能が開花すると言われています。なるほどねぇ。ミナちゃん、今ごろどうなっているのかなぁ?