今までに一度だけ、決定までの採用面接をやったことがあります。
保険会社にいたとき、山口県に新しい支社を設立することになって、その責任者として任命されたからです。
当時の組織では、地方支社に女性の事務社員を採用する際は、募集広告を始めとして全てが現場に一任されていて、とにかくやってみようという感じで面接に臨みました。
そのころは、今と違って会社の知名度が低く、募集時期も3月と新卒採用のタイミングでなかったため、採用枠2名に対して応募してきたのはわずかに7名でしかありません。そのうちの一人は、ちょっとないぐらいの美貌の持ち主で、営業での配属が決まっていた男性社員は目を輝かせて「この娘にしましょう」と息巻いていたのですが、こちらが提示した時刻に10分遅れてきたのを重く見て、バッサリ斬りました。
代わりに選んだのは、地元ホテルでフロントを任せられていた22歳と高校時代に平泳ぎでインターハイに出場した経験を持つ24歳の二人。決め手となったのは、二人とも字が綺麗であったことです。
保険会社にずっといたので、これまでに数多くの女性を見てきましたが、最初の印象と全然違うなんてケースは、ほーんと数知れずです。正直、ちょっと話したぐらいでは、その人の内面なんて分かりません。飾っているからです。ホンネを隠しているから。面接の質問に対する答えについても、ウソが多いというのを死ぬほど味わっています。まぁ、それはお互い様でもあるんですけどね。
そんな中で、ブレない拠り所となるのは、書かれた字の美しさです。エントリーシートを面接会場で書かせる企業が多いのも、そういうことなんじゃないかと思います。丁寧な字を書くということは、見られているという意識の高さに繋がりますし、最悪、それしか取り柄がなかったとしても、それなりに活躍の場がありますから。
それと、学歴も参考にはなります。◯◯大学出身だから良いとは限りませんが、それなりの知的水準に達している。あるいは、目標に向けて頑張ったことがあると推察できるからです。成功体験は、あった方がいい。
ルックスはどうなんでしょう? あのとき10分早く来てれば…分かりません?
『六人の嘘つきな大学生』(浅倉秋成著・角川文庫)は、IT企業の新卒採用をめぐり、最終選考に残った六人の就活生が、ひとつの席を奪い合う中で、それぞれのウソがあぶり出されていくという話。なるほど、そりゃあ自分のマイナスポイントは隠しますもんね。長所を盛ることだって、当然と言えば当然です。そういう視点で小説が一本書けるってこと。勉強になりました。
【テーマ】タイトル・時代性・学習性 17点
【文章技巧】読みやすさ・バランス 16点
【人物描写】キャラクター・心理描写・思い入れ 18点
【構成】つかみ・意外性・スピード感 17点
【読後感】共感性・爽快感・リアリティ・オススメ度 19点
【合計】87点