高校生のころ、『釘師サブやん』というパチンコを題材とした漫画がありました。
釘師というのは、パチンコ台にある釘の配置を調整して、出球をコントロールするというマニアックな仕事のことです。
普通だったらプレイヤーを中心に物語を展開させていくところ、作者はパチプロに対峙する「釘師」にスポットを当てていて、情報が少ないマイナーな事象を掘り起こすには、こういうやり方があるんだと感心したものです。
大学入学後、しばらくパチンコに夢中になったのは、少なからずこの漫画の影響がありました。これは、釘師との闘いであると。
2年ほどのめり込んで、飽きます。そんなに奥深くないし、常連と思われる人々が圧倒的に尊敬できないことに気付いたので。2年もいらないとは思う青春の無駄遣いです。
パリ五輪のボルダリング会場は、綺麗に仕上がっておりました。さすが、ファッションの先進国ですね。色使いが素晴らしい。
そして、その壁を作り込んでいくのが「ルートセッター」と呼ばれる仕事師たちです。安全性を考慮しながらも適度な難易度を保つという難しい職人技。どうやって熟達していくんでしょうね。やっぱり自分でも試しているのか、客観性をどこに求めるのか、非常に興味があります。「私がやります!」と手を挙げるとこ、釘師だわ〜。
この競技、トライをする前の選手は、基本的に他の選手の実演を見ることはできず、予め実際のコースを視認するにとどめるというところ、非常に変わっています。だから、何番目のトライであろうと、他者と比較することができず、ひたすら答案に向き合う受験生って感じ。まぁ、クライミングですからね、自分との闘いに集中するんです。結果は後からついてくるのが受験っぽいんです。
身長154㎝の森秋菜選手が届きっこないようなルート設定について、ネット上で批判の声が上がっておりますが、それは的外れな指摘です。日本人の身長が低いのだから、バレーボールネットの高さを変えろというようなもの。小さいからこその利点もあるわけで、何でもかんでも自分に有利にしようと考えるのは、トランプ的な発想で組み入れることはできません。
「だったら、お前やってみろよ」とルートセッターの声が私には聴こえるのです。
うん、勝ち負けが全てではない。競技の過程の中で、想像を絶するようなプロ技を見極めるって楽しみ方を私はプロレスで学びました。
それにしても、未経験者にもそこそこ理解できる超戦略的な競技としてのスポーツクライミング。途中で断念するのは将棋っぽくもある。多様性の時代なのであります。