その昔、保険会社で山口県の責任者を拝命し着任すると、周南市の青年会議所(JC)に入会させられました。JCは「明るく豊かな街づくり」をテーマに掲げ、40歳以下の主として若手経営者や地域のリーダーを目指す若者の集まりで、徳山では親の会社を継ぐ二世のボンボンが多かったです。だから、金持ちが多い。バブル期でもあり、彼らは領収書をもらいながら飲み歩くのが常でした。普通のサラリーマンが付き合うのは結構大変です。独身だから、何とかついていけたのです。
ある夜、徳山でも一番高いと思われる高級店へ行った時の話です。入店すると、お客さんよりも多い綺麗なホステスさんに囲まれ、圧倒されていたところ、仲間の一人がお決まりの台詞を発します。
「この人、〇〇保険の支社長。しかも、独身!」
当時は、(特にJCでは)田舎で30過ぎの独身者が本当に珍しく、私はそのワンパターンでいじられまくってました。
お決まりのように、女性陣は声を揃えます。
「エーッ、どうして?」
どうしてなどと聞かれても、しっかりした理由なんてありません。面倒くさいので、そういうときは、ちょっとシナを作りながらこう言います。
「俺、これ(オネエのポーズ)なんだよ」
「ワー、ウッソー」(ドッカーン‼︎)
何が面白いのか、そういうやり取りをみんなで楽しんでおりました。斎藤さんのハゲネタみたいな感じ。
30分ぐらい経ったころ、着物を着たキングオブ美人が登場します。ママです。
「いらっしゃいませ」
新規客の私に目をつけたのでしょう。「あ、どうも」と軽く挨拶した私から、じっと目を離しません。
「…なんかモテちゃうんだよね、独身だと(心の声)」と思いながらも緊張感に耐えられず目を逸らすと、
「わかります?」
と聞いてきました。「エッ?」何を言ってるのか、さっぱりです。
「私のこと、わかります?こんな格好だから、わからないかもしれないけど…。私、同じマンションに住んでるんですよ。昨日もエレベーター
で一緒になりました」
なるほど、私のマンションは、家賃がちょっと高めで(と言っても当時10万2千円、地元の人はみんな持ち家ですから)、水商売系の人が多く住んでいました。その日、東京から転勤でやってきた部下が、借家が見つかるまでの連日のホテル暮らしが気の毒だということで、私の自宅へ誘い、肉でも食おうと誘いました。昨日はそんな日だったのです。
「若い男の子と一緒でしたよね。スーパーからの買い物帰りで。袋からおネギが覗いてたからすき焼かなって思ったんですよ」
「………」
その場が静まり返ったのは、言うまでもありません。よくできたホントの話です。
翌日、行きつけのお店に寄ったところ、開口一番。
「若ちゃん、『これ』(オネエのポーズ)なんだって?」
うーん、田舎の人々、恐るべし!!