福本豊という選手は盗塁に生きがいを感じて、日米のプロ野球を通じて初の1,000盗塁を記録しました。
当時、国民栄誉賞の打診を受けましたが「そんなん貰ったら立ちションもできなくなる」と固辞したのは有名な話。通算1,065盗塁ってことは、それだけ塁に出てたってことで、打者としても通算2,543安打、そして通算208本塁打を記録していました。理想的なリードオフマンです。
そんな福本選手でも、盗塁に失敗したのが299回でこれもNPB史上一位、その成功率はトータルで78、1%でした。走りまくっていたものの、5回に1回はアウトになる。それが常識ってもんでしょう。
ところで、NPBで通算300本塁打300盗塁を達成しているのは僅かに二人しかいません。一人は西武の黄金時代を支えた秋山幸二。日本シリーズでホームインする時にバク転したのを今でも思い出しますが、全身運動神経の塊のようないわゆるアスリート体型でありました。で、もう一人は意外にもアスリート体型から程遠い3,000本安打を記録した張本勲です。ミスタージャイアンツの長嶋茂雄でさえ、生涯190盗塁であったのに対し、張本は319盗塁もしています。そんなに足が速いわけではなかったものの、ずば抜けた観察眼があり、相手のスキを見逃さないセンスの持ち主だったのです。ちなみに失敗したのが118回。成功率は73%でした(秋山幸二は72、3%)。
さて、本日MLBで史上初の50-50を達成した大谷翔平ですが、何と言っても驚くべきは、その盗塁成功率92、7%ってとこです。
メジャーには、身体能力の高い選手がキラ星の如くおりますが、その中でのリーグ2位。
これはまず、チーム内で行けたら行けのステータス、信頼を得ているからこそのチャレンジです。能力だけで言えば、他にもこのくらい走れる選手がたくさんいるハズです。だけど、そんなに自由に走らせてはもらえない。会社で言うと、経費の使い方を全て自分の判断に任せてもらっているような営業マンです。商談がうまく行かなくてもあいつなら仕方がないという信用がある人。状況を見て、臨機応変が出来る人ってことです。
投手や捕手のクセを見抜く観察力、ボールカウントに応じた配球の読み、投手の心理状態を想像する力、ピッチャーのモーションの素早さやキャッチャーの肩の強さなどを瞬時に計算する意識の高さによって、総合的に判断していると信じられているのです。
ボールカウントってところも重要で、大谷翔平の盗塁を分析すると、データから野球脳の高さが窺えます。
(つづく)