都会のネズミと田舎のネズミ

読書ネタ、スポーツネタ、お笑いネタ、時事ネタを拾いながら、笑いの方向へと導きます。3打数1安打を目指しています。ハズレよりもアタリを読んでください。

能面検事の奮迅

獅子奮迅の活躍という言葉、意味は分かりますが、実際の会話で使うことはなかなかないように思います。

大車輪の活躍の方がピンと来る。獅子は動物園にしかいませんからね。活躍するイメージが湧きません。

ましてや奮迅という熟語、これも耳慣れない。奮闘ってのはあるけど、奮迅は獅子にくっつけて初めて成立する言葉。洋食で言えば、パセリみたいな存在だと思うんです。

それをエイヤッと使うのが中山七里です。せっかく持ってきたから出しましょうと、わざわざ鞄から取り出すように、難解熟語を並べます。

 

『能面検事の奮迅』(光文社文庫)がまさにそれ。能面検事ってのもヘンだけど、感情を表に出さない無表情な様子を言葉に込めています。

物語は、国有地払い下げに関して財務局の調整官が便宜を図った疑いをかけられると同時に、調査に当たっていた検察官に文書改善の疑惑がかかる事案が発生し、それを解決するため、大阪地検の能面検事が真相を明らかにしていくというシリーズもの。検事が主役のテレビドラマはキムタクの『HERO』を始め、いろいろヒットしていますが、いずれも検事をサポートする事務官の視点を通じて主人公の個性を引き出しています。この小説も同じパターンで、そんな目で読んでいくと、先が見えてしまうってとこ、ちょっぴり残念です。同じじゃん。

国内の刑事裁判で、裁判所が有罪判決を出す率は99、9%と言われているだけに、それ以前の段階で起訴しないという部分の個性を磨いているのが作家たちの現状であり、ここでもまた似通ってしまうのでなかなか大変な創作活動だと思いました。

そんな中で、検事が事務官に注意を与えるシーン。

「軽々しく頭を下げる人間は、そのうち軽々しくミスを起こすようになる。失敗しても頭を下げさえすれば許されると思い込むからだ」のセリフが刺さりました。その通りだなぁ。

 

【テーマ】タイトル・時代性・学習性 16点

【文章技巧】読みやすさ・バランス 17点

【人物描写】キャラクター・心理描写・思い入れ 17点

【構成】つかみ・意外性・スピード感 17点

【読後感】爽快感・オススメ度 18点

【合計】85点