人を食ったようなストーリー展開と文章表現は個性的すぎると思うんだけど、江戸川乱歩賞をはじめ、いろんな文学賞を総ナメにしているのだから、文壇における評価は揺るぎないものになっているんでしょう。連続でノミネートされている直木賞受賞も時間の問題だとされている注目の作家が呉勝浩です。
『法廷占拠 爆弾2』(講談社)は、異色作であるノンストップミステリー『爆弾』の続編で、およそ600人の死傷者を出したスズキタゴサクの爆弾事件の公判からスタートします。
法廷内における人質占拠なんて、普通に考えたら起こるハズないんだけど、そういうのを可能にするところが呉勝浩です。
作者の描く犯人たちが、他の作家のと違うのは、殺害にためらいがない残虐性だと思います。いや、殺人鬼ってのは、いずれも倫理観が外れているんですが、大勢の前ではそれほど無茶をしないものなんです。マナーというか恥じらいというか、そう簡単に剥き出しにならないってとこに、ギリギリの理性が働くような気がするのに反し、むしろ誇示しようとするのが呉勝浩なんじゃないかと。
いろいろ書評を読んでみると、この作者は若い人の支持を集めているようです。
格差社会という壁に阻まれて、いつの間にか階級社会が出来上がっている現状に対する若者の不満が大きいんだなぁというのが何となく分かりました。
【テーマ】タイトル・時代性・学習性 18点
【文章技巧】読みやすさ・バランス 17点
【人物描写】キャラクター・心理描写・思い入れ 18点
【構成】つかみ・意外性・スピード感 18点
【読後感】爽快感・オススメ度 17点
【合計】88点