中学の国語の授業で「白夜」の読み方が話題になり、本当は「はくや」が正しいのに 森繁久弥が『知床旅情』を歌唱する中で「びゃくや」と言ったため、形勢逆転して「びゃくや」と読むのが主流となったと教わりました。もっといえば、国後(くなしり)に白夜が訪れることもないんだと。けれど、常識が変わることだってある、そういう内容だったと記憶しています。
TVerで東野圭吾原作の『白夜行(びゃくやこう)』をやってました。綾瀬はるかと山田孝之が主演を演じておりましたが、ホラーミステリーとでもいいますか、二人の憑依型の熱演にグイグイ引き込まれてしまいます。一生を愛する人のために捧げる男は、昼間の太陽の下を堂々と歩けない。だからの白夜行なんだと。スゴいこと考えるもんですね。設定がしっかりしているので、ストーリーがそれに乗っかって走る走る。
確か、この小説は20年ぐらい前に、東野圭吾にハマった時、読んだハズだったけど、もう一度読み返してみることにしました。
文庫本で800ページ以上ある超大作ながら、内容をほとんど覚えておらず、初見と変わらないように読んでいる自分に呆れています。そんなもんですかねぇ。当時も感動した記憶はあるんですが…。
小説はドラマと違う進行に塗り替えられていて、(実際は逆なんだけど)こちらの展開の方が鮮やかでした。13章のブロックに分かれていて、それぞれに登場する新たな人物を一人とし、読者を無理なくバーチャル空間へと引き込んでいく熟練の技。この人が理科系の大学出身であるのが信じられません。
主人公の一人である女性が貧しい家庭で育ちながら、その後、躾の厳しい親戚に養女として迎えられ、一見マナーが行き届いた良家の子女のように振る舞っている様子を間近に見ていた男性が、猫に喩えて描写しているのが秀逸でした。
「僕は、子供の頃、猫を何匹か飼ったことがあるんです。血統書付きではなく全て拾った猫でした。ところが、同じように接しているつもりでも拾った時期によって、猫の人間に対する態度は大きく違ってくるんです。赤ん坊の時に拾った猫と言うのは、物心ついた時からずっと家の中にいて、人間の庇護の下で暮らしているわけだから、人間に対して警戒心をあまり持っておらず、無邪気で甘えん坊です。ところがある程度大きくなってから拾った猫と言うのは、なついているようでよっても実は警戒心を100%解いていない。餌をくれるからとりあえず一緒に暮らしてはいるが、決して油断をしてはならない。そんなふうに自分に言い聞かせているような節があります」
喩えが上手い。芸能人で何人かの顔が浮かびました。てか、綾瀬はるかがそんなような?
【テーマ】タイトル・時代性・学習性 18点
【文章技巧】読みやすさ・バランス 19点
【人物描写】キャラクター・心理描写・思い入れ 19点
【構成】つかみ・意外性・スピード感 20点
【読後感】爽快感・オススメ度 19点
【合計】95点