田舎の集会所みたいな場所に老人を集め、ビンゴ大会の景品をエサに、医者的な専門家っぽい人が健康をテーマに講演して、浄水器や医療機器、それに羽毛布団とかベッドをローンで買わせる催眠商法が、あちこちで行われました。行われています。
主催者はニコニコしながら親切で気前がいいように装う。専門家っぽい人は、第三者っぽい立場からその商品を勧める。全納でなく、分割にするのは負担額を抑えるのと長いお付き合いにするため。田舎で実施するのは、お金を使う場所がないので意外に貯め込んでいる人が多いから。高齢者が多いってことは、健康に不安を抱えているし、医療機関の利便性が低いってとこがポイントです。集会所でやるのは、監視社会である村落の競争心を煽るため。それもこれも情報自体が充分でないところに起因しており、騙されやすい条件が揃っているのです。
資料請求で牛肉をプレゼントする保険会社や過払い金請求を勧める法律事務所も発想は同じなんですけどね。
そういう仕事を何の疑問も持たずにCMで流すテレビやラジオだって、どうかと思います。食事会があると言って誘い出しながら、一緒に行くハズの人々がみんなドタキャンする絵を描くプロデューサーもいるぐらいですから、マスコミが正義だなんて信じているのは情報弱者です。
だから、読書が重要なんです。ミステリーを読んでいれば、簡単に人の話を信じなくなる耐性がそれなりに出来上がる。特にオススメは、犯罪教本ともいえる黒川博行の作品群です。
今年度、読み初めは『泥濘(ぬかるみ)』(黒川博行著・文春文庫)であります。
老人ホームにオレオレ詐欺がテーマなんだけど、ビックリしたのは、その筋の人たちにあらゆる名簿の中で価値が高いのが、有料老人ホームへの待機者名簿だってこと。なるほど、高額の入居費用を用意できる財力があるし、本人は決して健康だとは言えず、うまくすると認知症があったりして、絶好のカモとなり得る。だとすれば、介護施設の経営は発展性があるので、そこに警察OBを絡ませて、裏では詐欺グループの元締めになるなんてことを考える輩が出ても不思議ではありません。蛇の道はヘビであり、詐欺グループはヤクザよりも警察関係者が裏で糸を引っ張っている方が闇が深くなります。
真面目に働いている人は烈火の如く怒るでしょうけど、あり得なくもないと思ったりしました。
作品の中での会話体がヤクザそのもので、作者の交友関係はどうなっているんだろうと、ちょっと疑ってしまいもしました(回りくどい)。
【テーマ】タイトル・時代性・学習性 17点
【文章技巧】読みやすさ・バランス 15点
【人物描写】キャラクター・心理描写・思い入れ 20点
【構成】つかみ・意外性・スピード感 18点
【読後感】爽快感・オススメ度 19点
【合計】89点