池井戸潤という人は、東京三菱UFJ銀行の出身であり、世の中的には『下町ロケット』での直木賞作家というよりも、「やられたらやり返す、倍返しだ」の半沢直樹で知られているんだと思います。
現在の同行の頭取は、同期入行である半沢淳一でありまして、本人は偶然だと言っておるようですが、そんなにありふれた苗字じゃないだけに、少なからず意識していたのではないでしょうか。逆に言えば、半沢頭取も名前で得をしたような気がします。なんか、やってくれそうだという金融庁に対してのメッセージ。
『オレたち花のバブル組』(池井戸潤著・文春文庫)は、そんな半沢直樹の活躍を描いたストーリーです。同期入行の仲間と連絡を取り合いながら、銀行内に蔓延る悪習を一掃しようと活躍する。なんとなく、行員時代の鬱憤を晴らしているような、そんな思いがたっぷり伝わってきました。実際には、上に逆らうような異分子は、あっという間に排除されてしまうんでしょうけどね。ほとんどの金融マンは、清濁合わせ飲まざるを得ない現実がある。だからこそ、金融機関に勤めている人たちからの支持は絶大だったと推察するのであります。オネエ言葉の検査官なんて、いるわけないんだけど、そういうキャラ付けをすることで、印象操作するのを怠りません。リアルに近づける小説よりも、万人受けするテレビ向きのストーリーであると改めて思いました。
【テーマ】タイトル・時代性・学習性 15点
【文章技巧】読みやすさ・バランス 16点
【人物描写】キャラクター・心理描写・思い入れ 16点
【構成】つかみ・意外性・スピード感 16点
【読後感】爽快感・オススメ度 16点
【合計】79点