年初に読んだ『泥濘(ぬかるみ)』があまりにも面白かったので、作者の黒川博行を深掘りしてみようとデビュー作の『二度のお別れ』(創元推理文庫)を取り寄せました。
なるほど、この作品は1984年、つまり40年前のもので、携帯電話がなければ、監視カメラやNシステム(自動車ナンバー自動読取装置)がないため、今とは捜査手法が随分違っているのが分かります。事件は、銀行強盗にはじまる誘拐脅迫なんだけど、2000年より前までは、確かにありましたよね、銀行強盗。だけど、銃社会でない我が国では多くの人質を支配するのが難しく、仮にそこをくぐり抜けたとしても、犯人が逃げ切れるわけがないというのは誰もが思うところ。だから、不特定多数に向けての凶悪な犯罪が減って、直ぐには分からない特殊詐欺のような陰湿な事件が増えたのが流れであり、そういう意味では、犯罪における複雑さが近年の傾向であることを改めて認識させられました。ミステリー小説としては、可能性が拡がっています。
それにしても、本作における刑事同士の会話の緊張感のなさは、いろんな作者による多くの警察小説を読んできた経験からすると、あり得ないコメディタッチだったので興醒めです。本来の警察組織は上意下達でガチガチのハズですからね。その部分が大幅にマイナスで、トータル82点でありました。映画やテレビドラマもそうだけど、あんまり古い作品に期待しすぎるもんじゃないと、改めて思いました。
【テーマ】タイトル・時代性・学習性 16点
【文章技巧】読みやすさ・バランス 15点
【人物描写】キャラクター・心理描写・思い入れ 16点
【構成】つかみ・意外性・スピード感 18点
【読後感】爽快感・オススメ度 17点
【合計】82点