作家として生計を立てるのは、簡単なことではありません。
直木賞や芥川賞など作品の賞レースが出版社ごとにいろいろあって、次々に新人が出てくる上に、結構みんな長生きであるため、作家人口が増える一方で、若者の活字離れや読者高齢化による購買力低下で出版不況の現実があるので八方塞がりのイメージです。
海賊王になるとばかりに、宣言すれば誰でもなれるような職業の現実は非常に厳しいと想像するのです。
そんな中では、弁護士とか医者とかの資格を持ちながら、作家でもあるという二刀流は、まさに現代的だと言えるでしょう。
五十嵐貴久とか新川帆立なんかは余裕だろうなと思います。
鮎川哲也賞を受賞した山口未桜(1987年生まれ)も現役の消化器内科医だそうです。神戸大学医学部卒ですって。
人の生き死にに関わる仕事自体、ミステリーの題材に事欠かないわけで、そういう仕事の人が本気で取り組むと、迫真のドラマを描き切ることができるんだなぁと納得です。
その受賞作『禁忌の子』(東京創元社)は、救急医の元に搬送されてきた溺死体をきっかけに、生殖医療にまつわる問題点を浮き彫りにした本格ミステリーです。偶然に偶然を重ねるところ、強引だなぁと思うし、警察が見放した事件をホームズさながらに一介の勤務医が捜査に乗り出すなど、片平なぎさが出てくる二時間ドラマっぽい展開ですが、ところどころに専門家ならではの細やかな描写が含まれていて、ドキッとさせられました。今後に注目の作者です。
【テーマ】タイトル・時代性・学習性 18点
【文章技巧】読みやすさ・バランス 17点
【人物描写】キャラクター・心理描写・思い入れ 15点
【構成】つかみ・意外性・スピード感 19点
【読後感】爽快感・オススメ度 18点
【合計】87点