都会のネズミと田舎のネズミ

読書ネタ、スポーツネタ、お笑いネタ、時事ネタを拾いながら、笑いの方向へと導きます。3打数1安打を目指しています。ハズレよりもアタリを読んでください。

貧乏大好き

私の活字中毒のきっかけとなったのは、椎名誠です。

ちょっと不良だけど硬派な彼の文体に、まず惹き込まれました。『さらば国分寺書店のオババ』から始まって、『哀愁の町に霧が降るのだ』『気分はだぼだぼソース』『もだえ苦しむ活字中毒者地獄の味噌蔵』『むははは日記』『全日本食えばわかる図鑑』など、片っ端から読み漁ったのが入社して間もない二十代のころ。読書の入門編としては理想的な読みやすさで、難しい言葉があまりなく、しゃべり言葉をそのまま文章にしているため、気楽な会話を聞いているように、すーっと入っていきます。友達と話している気持ちにさせてもらいました。

その繋がりで、影響を受けたのが東海林さだおです。

本職は漫画家なんだけど、モテないサラリーマンを主人公とした漫画のほとんどはスベってる不思議な世界、独特のスベリ漫画芸です。非常に弱い線で描く作画もヘタウマでありまして、ダンディ坂野みたいな感じ。毎日新聞に連載していた四コマ漫画アサッテ君』は、13,749回も続いたそうで、どれもが似通った内容のマンネリさこそが、異次元の能力とも言えるんでしょう。安心のマンネリズム

で、漫画よりもスゴいのがエッセイでありまして、数えたら私の書架に30冊もありました。そのほとんどは、食い物と旅行など自身の体験をもとに考察した内容で、根底にはモテないってことと、ケチケチな生活感が集約されています。お金、持ってるハズなんですけどね。林真理子とは対照的な食生活です。

近著『貧乏大好き』(だいわ文庫)は、食にまつわる過去分のエッセイを吸い上げて、ちょうど良くまとめたものです。

貧乏が好きなんじゃなくて、無駄遣いが嫌いなわけで、どちらかと言うとケチの指南本なのであります。

・おじさんは、試食を男女問題と同じように考えている。一度手をつけたら、それなりの責任を取るべきだと。

・ケチと言われる人は、人にケチと言われても平気な人、つまり信念の人なのである。

・牛丼屋は雰囲気が暗く、空気も重くよどんでいるので、気楽に出入りできない雰囲気があるため、OLやおばさんはまず来ない。

・サンマやイワシやサバの缶詰はあるが、鯵の缶詰は聞いたことがない。

ソース焼きそばは、高級化への道が閉ざされている。一生懸命作ってもそれほど美味しくならないし、うんと手を抜いてもまずくはならない。

・ホテルと寿司屋は何とかして客を馬鹿にしよう、田舎もんをあざ笑おうと待ち構えている。

 

週刊朝日が廃刊となったので、食い物エッセイの連載が止まってしまいましたが、やはり食レポ的な文章力は秀逸です。

それは、長所を見つけ出す能力がズバ抜けているからで、29冊も読み返してみようと思いました。