都会のネズミと田舎のネズミ

読書ネタ、スポーツネタ、お笑いネタ、時事ネタを拾いながら、笑いの方向へと導きます。3打数1安打を目指しています。ハズレよりもアタリを読んでください。

A.I

30年ぐらい前は、将棋界ではコンピュータなんぞに負けることなどないと言い切っていた棋士が結構いました。

実際に2010年ごろまでは、プロ棋士が同じ土俵に立つこともなく、アマ三段の私でさえ、そう簡単に負けないので当然だと甘くみていたのです。

それまでは、アマチュアとしての将棋愛好家が人工知能研究に没頭して、自身の考え方をベースに積み重ねていたような感じだったと思います。

ところが、あるときから、ほとんど将棋を指したことがないようなど素人の学者がプログラム開発に参入して、スゴいスピードで進化するようになり、AIがプロ棋士の対抗戦に勝利するようになったのです。過去からの流れを追っていくのではなく、その場その場における局面に評価値という概念を採り入れて、逆算していくような考え方。前からじゃなくて後ろから考えるってのは、経験者じゃないからこそのオリジナルだと思います。このときの衝撃は忘れられません。無念の涙を流す棋士やファンも大勢おりました。それも少しの間だけ。その後は、プロ棋士が自身の研究に人工知能を採り入れるのが当たり前になっています。今や、全棋士人工知能の方が強いということを認めているのは周知の事実です。

その中で、藤井聡太だけは別格かもしれません。実際に、彼の対局における指手のほとんどがAIと同じだったりするし、時にはそれ以上の読み筋を披露することだってある。ホント、スゴいんです。

ただし、それじゃ両者でタイトル戦を争ったらどうなるか?

これは残念ながら、AIに軍配を上げざるを得ないです。何故なら、人工知能には感情がないので、失敗を引きずるようなことがないし、それ以上にスタミナが無尽蔵であるところ。この点で敵わないんです。頭脳戦においてスタミナは最重要であり、誰も思いませんよね、受験勉強でAIと勝負しようなんて。

 

私が映画を観るようになったのは最近のことであり、話題になったような名作でも見逃していたものがたくさんあります。

深夜にNHKBSでスピルバーグ監督の『A.I』をやってました。2001年の作品だそうです。

ざっと紹介すると、地球温暖化が進んで多くの都市が海に沈み、妊娠・出産に厳しい許可制度がしかれたため、人間の代わりに多くの資源を必要としないロボットが活躍するようになった近未来の話です。その時代に、人間と同じ愛情を持つロボットとして開発されたデイビッドは、彼を製作したロボット製造会社の社員、ヘンリーとその妻モニカの元へ試験的に送られました。夫妻には、不治の病を持つ息子のマーティンがおりましたが、冷凍保存で眠っていて治療のめどが立たないことから、目覚める保証もなく、実質的に子供がいないのと同じでした。そこへ母親となるモニカを永遠に愛するようプログラムされたデイビッドが家族の一員となりましたが、マーティンが奇跡的に病を克服して目を覚まし、退院して家に戻って来てしまったので、モニカはデイビッドよりもマーティンの方に愛情を注ぐようになり、挙げ句の果てにデイビッドは森に捨てられるという流れです。

なるほど、少子化や温暖化、食糧不足の行き着く先が、ロボット社会であるとは暗示的で、必然であるような気がします。

そんな中、ロボットが人間に近い感情を持つことをテーマとしたこの作品は、手塚治虫の世界だなと思いました。おそらくは少なからず影響を受けている。従属させたものとばかり思っていたのに、いつの間にか敵対関係になってしまうのは仕事を奪われるからで、外国人労働者に対する感情と似ているのであります。

そして、人工知能が感情を持ったとき怖いなと思うのは、一途でブレないところだと気付かされました。存在がストーカーっぽくなってしまうと、それはそれで怖い。人間の良さは、妥協できるところだと思うのであります。