大学卒業後に勤務した保険会社で配属された支払い部門には、社内一と言われる美女がおりました。
その女性の隣りの席に座らされた私は、毎日が夢のよう。大学では将棋部でしたからね。美しいだけでなく、頭が良くて性格もいい。こんな人が本当に実在することが信じられず、神様に感謝する日々でした。その美貌は、当然のこととして社内でも知れ渡っており、連日、用もないのに顔を拝みにやって来る他セクションの社員が引きも切らず、ちょっとした名物になっていたほどです。
ところが、上には上がいるもので、30年ぐらい前ですが、週刊文春の巻末グラビア見開きで『全国美女OLコンテスト』というのがあって、当社の企画調査部に勤務していた女性が三週連続勝ち抜きという偉業を成し遂げました。それはもう、非の打ち所がない。前例に倣って、見学に行きながらも、眩し過ぎて目を合わせられない、そんな感じだったのを思い出します。
『署長シンドローム』(講談社文庫)は、今野敏のシリーズもので、男社会の警察組織に絶世の美女がキャリアの所轄署長として登場し、海千山千の男たちを手玉に取るというストーリーです。水戸黄門の印籠に匹敵するような存在感は、理屈を超えており、だからと言ってルールをはみ出すようなこともなく、思わず唸ってしまいました。
いつも思うのは、上手い作家が登場人物を際立たせるのは、モデルになるような役者を頭に置いているってところにあります。
本作で、私がイメージした女性は、北川景子です。こんな人が警察署長だったら、楽しいだろうなと思います。
次回作は、近々公開されるとのこと。待ち遠しいのであります。
【テーマ】タイトル・時代性・学習性 17点
【文章技巧】読みやすさ・バランス 18点
【人物描写】キャラクター・心理描写・思い入れ 20点
【構成】つかみ・意外性・スピード感 18点
【読後感】爽快感・オススメ度 18点
【合計】91点