国民のほとんどが知っているけれど、その題名が知られていないのが、オッフェンバッハ作曲の『天国と地獄』です。小中学校の運動会で、徒競走の定番ソングなので、聴いてみれば「あぁ、あの曲ね」と思うことでしょう。本人は、そのつもりで作ったわけじゃないでしょうけどね。
もともとは、ギリシャ神話の神々がドタバタ騒ぎを繰り広げるをモチーフとしたもので、最初は無声映画にお決まりの追っかけシーンとして使われ、その後、運動会へと発展していくのですが、もう一つ、この曲は別名『フレンチカンカン』と呼ばれており、その流れで『文明堂カステラ』のCMソングとして使われたそうです。
今日のNHKBSは、昭和38年の邦画『天国と地獄』でした。これは、黒澤明監督の代表作として知られており、当時の誘拐罪における刑の軽さ(未成年者略取誘拐罪で3ヶ月以上5年以下の懲役〈刑法第224条〉、営利略取誘拐罪で1年以上10年以下の懲役〈刑法第225条〉)に対する問題提起だったと言われております。実際に映画が公開された以降、吉展ちゃん誘拐殺人事件など誘拐事件が多発したことで、国会で取り上げられ、身代金目的の略取が無期または3年以上の懲役と法改正が行われました。
今から62年前の映画に三船敏郎・仲代達矢・山崎努・香川京子らが出演していたのも懐かしい。子役が江木俊夫ってのもねぇ。マグマ大使のマモル君は、その後フォーリーブスへ進化します。
犯人が要求してきた身代金の金額は3,000万円で、相場の10倍だというから驚きです。高度成長が始まるちょっと前なんですね。そこから5年後に三億円事件が起きるわけです。
そういや、登場人物たちはやたらと汗をかいていました。金持ちの家でもクーラーがなかったのが、東京オリンピックの前年なのであります。
う〜ん、イマイチ入り込めなかったのは、説明調のセリフが多かったからです。今みたいな情報に溢れた社会でのような免疫が観客に期待できないと、仕方がないのでしょうか?