お笑いで「あるあるネタ」が成立しているのは日本の国が独特で、よその国ではあまり見られないジャンルなんだそうです。
それは、日本語ほど国籍と使用者が一致する言語が珍しいからであり、同質の人間が言葉のみならず、文化や生活について、共通の認識を持っていることによります。
海外では、笑わせる相手の人種や社会階層によって、話が変わってくるというのです。
なるほど、そんなこと普段は意識していませんが、同一の民族が同じ言語のみを使って生活しているのは、他国から見て不思議に思われることもたくさんあるでしょう。
外国人との関わりが少ないことで、排他的な考えの人が多いのは事実です。
ただ、少子高齢化の影響で、そんなことは言ってられなくなりました。介護施設で外国人労働者に接する人たちを中心に、理解しようとする輪が広がっています。
『やさしい日本語ってなんだろう』(岩田一成著・ちくまプリマー新書)は、外国人に伝わりやすい日本語について、言及した良書です。
やさしいは、易しくもあり優しくもあるってことなんです。
多くの日本人の誤解は、外国人を見ると、英語でコミュニケーションを取ろうと考えますが、英語話者の総人口は、10〜15億人程度で二割ぐらいだそうです。そして、日本に在住している外国人は、ほとんど例外なく、そこそこ日本語がわかる。だからこそ、分かりやすい日本語を使うべきなのです。
それは、一文を短くすること、受身表現を使わないこと、専門用語を避けること、何より平仮名で話すことを意識します。
また、外国人向けの日本語教科書の文体は、デスマス体だということに留意して、決して親しみを込めた普通体(タメ口)で話さない。
デスマス体は、文の切れ目がハッキリ分かるのと、敬語の体裁をとっているのが良いんです。
面白いのは、やさしい日本語の考え方が、日本人が相手だとしても同じだという点に行き着いたところです。
一文を短くすること、受身表現を使わないこと、専門用語を避けること。
公用文が例として挙げられておりましたが、医者や弁護士なんかも意識すべきですよね。
日本の政治家は、国民の識字率100%を盲信しているけど、それは平仮名レベルの話であって、ちょっと小難しい内容だと、コミュニケーションが取れなくなるケースがたくさんあります。だからこそのやさしい日本語。専門家に任せるだけでなく、そういう考えを多くの人が持つようになれば、世の中はもっともっと明るくなるのであります。