肖像権の問題で、今はもうできなくなっていますが、昔の野球漫画には、実際の選手や監督コーチたちが実名で登場しておりました。
今考えると、地上波における巨人戦中継を支えていたのが、『巨人の星』や『黒い秘密兵器』など週刊誌の連載だったと思います。
漫画の中心人物は、架空の人間なんだけど、多くのキャラクターはジャイアンツへ入団して、先輩たちからいろんなアドバイスを受けるっていうのが定番のスタイル。その中で、試合中とは違う選手の一面を見せられることで、余計にチームへの愛情が深まったのでありましょう。
中でもひときわキャラが立っていたのが、長嶋茂雄でありました。
主人公が悩んでいると、親身になってアドバイスしてくれるし、気前よくご馳走してくれる。まぁ、実際にもいい人だったんでしょうけど、そういうエピソードの多くも味方につけていた気がします。
漫画家としても、天然ボケな言動を繰り返す長嶋茂雄は、隙がない優等生タイプの王貞治よりも描きやすかったことと思います。
その中で『少年』という月刊誌にわちさんぺいが連載していた『ナガシマくん』(1959〜64年)は、私の記憶に強く残っています。
長嶋茂雄のプロデビューは1958年ですから、この漫画は先取りでした。
勉強は苦手だが、野球が大好きなナガシマくんは安打小学校に通っています。床屋を経営するお父さんや優しいお母さん、イタズラ好きの妹といった家族やチームメイトとの日常が描かれた、ほのぼのした漫画。小学生だから、直接触れ合うことはありませんが、長嶋茂雄を拝むような気持ちが散りばめられていて懐かしいです。思わず単行本を購入しました。
告白すると、私はアンチ巨人ですけど、実は選手・長嶋茂雄のファンでもありました。そういう人もすごくいたように思います。
享年89歳。合掌。