都会のネズミと田舎のネズミ

読書ネタ、スポーツネタ、お笑いネタ、時事ネタを拾いながら、笑いの方向へと導きます。3打数1安打を目指しています。ハズレよりもアタリを読んでください。

生きていてもいいかしら日記

今や大作家となった日大の林真理子理事長のデビュー時は、エッセイストとしてであり、次々に自虐ネタを放り込んでウケまくっていました。容姿に関する話題を軸とした天晴れな自己開示ぶりが女性として珍しく、鉱脈を掘り当てたみたいにファン層を広げていったものです。その後、収入の増加と共に美容とファッションに目覚め、立場は一転。ルッキズム許すまじの姿勢で、今度は言葉狩りの立場へと宗旨替えを行なった、そんな感じだったと見ています。今の彼女をあんまり好きになれないのは、昔のスタイルを貫いて欲しかったからです。

 

お笑い業界における成功の第一歩は容姿に関する自虐ネタで、圧倒的な不細工ぶりとか禿げネタとか、秀でたものを持っていると早く世に出やすいというのが定説(?)です。ただし、それを自分で表現するよりは、相方にイジってもらった方がしっくり来るようで、アインシュタインとかママタルトとかタイムマシン3号とかギャロップとか錦鯉とか…爆笑問題もそうですね。

ピン芸人がそれをやると、逃げ道がないために自爆してるみたいになります。気の毒過ぎる感じ。漫才コンビが踏み込みすぎてもイジメっぽくなるし、女芸人には男性フェロモンを遠ざけてしまう覚悟がいる。自虐ネタは難しいんです。

そういう意味で、ハリセンボンの「角野卓造じゃねーよ」は新鮮でした。近藤春菜はピンでもやり切りますからね。その振り切った芸風は、似ているもののバリエーションを増やしていくことで、高等技術へと昇華させていきました。スゴい。

 

エッセイ業界における必殺技は、自虐ネタと失敗のエピソードトーク、偏向した趣味と貧乏話、それに一風変わった食い物談義だと思います。

そこのところをさーっと切り取って第一人者として走り続けているのが北大路公子って作家らしい。

最近になって、その存在を知り『生きていてもいいかしら日記』(PHP文芸文庫)を購入しました。

なーるほどねぇ。面白いわ。ほとんどメディアに登場していないし、仕事の幅も広げないので、そんなに稼いではいないだろうと想像するものの、一日中飲んだくれて遊んでるような毎日を過ごせるのは、筆の力があるからこそ。体脂肪40%だと言ってますし、中年でバツなしの独身でノーメイクで歩き回るって豪語してますから、遭ってみたいとの男性目線での興味は1ミリも湧かないけど、日常生活に若干の不満を持った多くの女性読者に夢と希望を与えるような存在であるのは間違いありません。似通った部分を持ちながらも、この人よりはマシだと感じさせようとする出版社のターゲットマーケティングに方向性がピタリと重なりました。本人もそれを維持するために、幸せになりすぎないよう意識して、露出を控えているのではないかと邪推しています。

いやいや、文章の巧さもさることながら、やさぐれた生き様がギャンブルにのめり込まない西原理恵子みたいでカッコいい。勉強になりました。