いつも怒っているかのような仏頂面で、いろんなものをバッサバッサと斬っていくさまは、編集者ならではの冷静さに裏打ちされたものでした。
外来語やアルファベットを多用する独特な文体は、昭和軽薄体と呼ばれ、いろいろ参考にしたものです。嵐山光三郎先生。
最初に衝撃を受けたのは、サラリーマンの生き方を指南する『超道徳本当講座』(光文社)でした。
「言葉というものは、もともとウソをつくために生まれた。何故なら、原始時代、人は本能のままに欲望を実現させていたので、言葉なんかいらなかったからだ。だけど、ホントは殺したいと思っている相手を油断させるためには、違うことを伝える必要がある。そこで、実際にやりたいことと違うメッセージを届けるために言葉が生まれた。だから、言葉はホントのことを言うのでなく、ウソを言うために使うべきなのだ」
そうだよな〜と感心したものです。当時、社会人一年生の私。
「お手数をおかけします」とか「お忙しいところ恐縮ですが」なんてビジネス用語をそうやって理論付けしておりました。
また、『不良中年は楽しい』(講談社)では、「不良とは自分をとりまくさまざまの規制から自由になる行為である。会社から自由になり、妻から自由になり、子から自由になる」ことと定義し、オヤジ世代に対し、50歳を過ぎたら「マジメ人間よ、目ざめて不良になれ」とけしかけます。
「不良オヤジになるにはどうしたらいいか。それには、まず、先人の不良オヤジに学べばいい。マルクスもエンゲルスも、ドストエフスキーもトルストイも、西行も芭蕉も一茶も、エジソンもアインシュタインも、荷風も谷崎潤一郎も川端康成も不良だった」とあるように、先人たちの不良ぶりを示すエピソードを紹介しています。結構、影響を受けました。
『緊急問題』(本の雑誌社)における木村晋介との対談では「浮気相手は妻より10歳以上の年下を選ぶのがマナーだ」と主張しておりました。それだったら、配偶者も納得するというのです。まぁ、それは比較の問題なんだけど、一理あるなぁ。玉木雄一郎も許してもらえました。
カッコよく生き続けるのは簡単じゃないけど、男にはモテると思います。それはそれで楽しい人生。
享年83歳。合掌。