今、注目の作家が朝井リョウです。
これまで『正欲』『生殖記』と読んで、その難解な文体に苦労してきましたが、『あちこちオードリー』でのひょうきん振りを見て、アレレと思い、彼が書いたエッセイ本にも手を出してみました。すると、なかなかの面白人間であることが判明。バカバカしさに向かっていく生き様に、すっかり魅了されたのです。ただのインテリじゃありません。
で、話題になっている『イン・ザ・メガチャーチ』(日本経済新聞出版)にチャレンジしました。
最初の25ページを読むのに一時間かかったのは、文章密度が濃いからなのと、全く畑違い(と思っていた)推し文化の説明だったから。しかしながら、この25ページが、後の展開を読みやすい方向に導いてくれます。
前提としての用語解説をしておきましょう。
「スパチャ」 YouTubeのライブ配信中に、視聴者が配信者へ直接お金を送れる投げ銭機能。お気に入りの配信者に気付いてもらうと嬉しいらしい
「タグイベ」 アーティストのファンが特定の日時にSNSでオリジナルのハッシュタグを一斉に投稿し、トレンド入りを目指す推し活活動のこと
「コンプ勢」種類が多数ある特定のモノをすべて揃える人を意味する。コンプは「コンプリート」の略
「ハッシュタグデモ」 XなどのSNS上で、特定の「#(ハッシュタグ)」を同一時間帯に多数のユーザーが投稿し、トレンド入りさせることで社会的な主張を拡散する活動
「ビーリアル」 1日1回ランダムな時間に届く内・外カメラで同時に撮影した盛らないリアルな日常を投稿する、Z世代に人気のSNSアプリ
「オプチャ」 LINEの友だち交換不要で、匿名かつ最大1万人が共通の話題で交流できる公開チャット機能
「ティーザー」 新商品や映画、イベントの公開前に、情報を小出しにして消費者の好奇心や期待感をかき立てるマーケティング手法
「リアタイ」 リアルタイムの略で、放送やイベントをその時(リアルタイム)に視聴・参加すること
「サバ番」 多数の参加者が厳しい練習や審査を経て、最終的にデビューメンバーを勝ち取るまでの過程を描くリアリティ番組のこと
「フラゲ日」 CD、DVD、ゲームなどの商品が、正式な発売日よりも早く店頭や配送で入手できる日のこと
「ヘルジャパン」 性差別や低賃金、閉塞感などが蔓延する、生きづらい日本の現状のこと
どれもこれも「推し」の間で頻繁に使用されている用語で、やたらと縮めるので余計に分かりにくくなっています。
だけど、昔「オタク」だとして侮蔑的にさえ扱われていたものが、じわじわ拡がって、普通になっていることに改めて気付かされます。いつの間にか世の中は激変しておりました。「推し」だらけです。
それと、主人公の娘が通う大分県の大学は、実在する立命館アジア太平洋大学をモデルにしたもので、当ブログでは昨年6/9に肯定的に紹介しておりました。日本にいながら海外留学みたいに思ったからです。しかしながら、寮生活が中心となっているときの負の部分に光を当てているのが流石です。どんな学校にも落ちこぼれは必ずいるってとこ、しっかり描いています。
ちなみに、メガチャーチとは、アメリカの宗教右派勢力が礼拝をライブみたいな演出で信者を増やすような手法が、マーケティングに繋がっているとの考えに基づいたもので、そういう分析もあるんだと驚かされました。そういや、トランプも踊っていたなぁ。信者ねぇ。
う〜ん、自分の生活がうまく回らなくなって、ふと気付いたときの閉塞感は、誰もが少なからず感じているものであり、何とも言えない気持ちに持っていかれます。他人事で高みの見物だと思っていたのに、いろんな事象が次々と自分へも刺さってくるホラー小説でありました。
【テーマ】タイトル・時代性・学習性 20点
【文章技巧】読みやすさ・バランス 18点
【人物描写】キャラクター・心理描写・思い入れ 20点
【構成】つかみ・意外性・スピード感 19点
【読後感】爽快感・オススメ度 20点
【合計】97点