河合優美という女優を最初に意識したのは『不適切にもほどがある』のドラマでした。不思議な存在感。近頃の若いタレントはお目々パッチリのアイドル顔が主流なので、キツネっぽい昭和感漂うちょっと斜に構えた風貌は、印象に残るものでした。山口百恵っぽい。
次に観たのがNHKBSの『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』です。これも不思議なドラマで、早くに父親を亡くした主人公が、車椅子生活を余儀なくされた母親とダウン症の弟の面倒を見ながら、明るく前を向いて力強く生きていく姿を熱演していました。
そして、三つ目が朝ドラの『あんぱん』で、戦争で愛する人を失った女性を演じています。まぁ、ドラマですから、平凡な生き方とはならないものの、それぞれの演技プランの懐が深く、内面を絞り出すパターンがいくつもある、そんな感じです。
で、昨夜に観たAmazonプライムビデオが『あんのこと』。
この作品は、実際にあった事件をもとに作られたそうです。
母子家庭に生まれた杏(あん=河合優美)は、幼少期から母親の虐待を受けて育ち、小学校4年で不登校となりました。12歳になると、母親から売春を強いられて薬物依存にも陥ります。その後、覚せい剤使用容疑で逮捕され、親身になってくれる刑事と出会いました。その刑事が生活保護や更生の世話をしたことで、杏は少しずつ心を開きます。毒親のいる家を出てシェルターに避難し、薬物脱却のための自助グループに通い、老人介護の仕事に就き、夜間中学で勉強にも励む…。ところがここから暗転していきます。
登場人物それぞれの善と悪が交錯し、それに翻弄されていく杏の人生がなんとも切なく悲しいのですが、まるで本当にいるかのように演じる役者ってのはすごいもんだなぁと思わせてくれます。
河合優美はこの映画で、去年の日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞しています。当然だと納得しました。