その昔、土曜日のお昼に『お笑いスター誕生』というオーディション番組があって、次々に面白い人たちが出てくるのを楽しみにしておりました。何故、土曜の昼間なのか、今思うと不思議でしょうがありませんが、週休二日の始まりの頃ってのが関係するんでしょうかねぇ?そういや、私は会社勤めを始めていました。週休二日の会社でした。
番組が斬新だったのは、新しい笑いを幅広く提供する嗅覚の鋭さだったと思います。
それまでにない、お笑いの形を提供していくというスタイル。とっても斬新でした。
もみじ饅頭のB &Bをはじめ、石橋木梨のとんねるずや大竹まことのシティボーイズなど、切れ味鋭い若手芸人が、それぞれに新しい世界を切り開いていたのです。
その中で、不思議な世界を創り出していたのがイッセー尾形です。コントの相手方をきりとった一人芝居というジャンルは、それまでなかったような…。いわゆる大人の笑いです。いない人のことをお客さんに想像させる高等テクニック。落語ともちょっと違う。いやぁ、衝撃のデビューでした。以降、現在に至るです。
『本人の希望』(イッセー尾形・森田雄三共著・早川書房)は、彼の舞台をそのまま活字に著した戯曲です。ト書きの塊で、台本みたいな一冊。
何が可笑しいって、あるあるネタだからです。
この中で、妻と母親との間で板挟みになる「幸せ家族(ハワイ篇)」は秀逸でした。これだけを読むための価値が充分にあります。こういうストーリーが描けるのは、実体験が元になっているんでしょうね。ってことを思わせるのはイヤだから、私だったら読ませないようにするんだけど、どうなんでしょうね。プライバシーを露出する作家稼業は、犠牲も大きいのであります。