十年以上前ですが、浅草に欽ちゃん劇団専用の劇場があって、打ち合わせと称し、そこでの稽古をよく見学に行ってました。
この劇場では、連日のように芝居を見せながら、お客さんがテーブルで飲食できるという仕組み。
お笑いのディナーショーですね。
そして、通常は昼間に若手のコメディアンが芝居の稽古を行い、大将が指導をする。
これがまた、本当に細かいんです。歩き方とか、言い回しとか。
何回かやらせて、その人に答えが出せないと見るや、すぐさま選手交替となってしまいます。
ときには、その指導の意図が分からないことも。
どうやら、一つの所作や言葉をどれだけ拡げられるかのアドリブ力のようなものを試しているらしい。
それは、普段から考える習慣を持っているかどうかで、随分と大きな差が出るんです。
いいとか悪いとかじゃなくて、引き出しを拡げろってことなんだけど、最短距離のみが正しいなんて思っていると、素直になれません。
大将の言っていることが、聞けなくなるんです。
正解なんて一つだけじゃないんだけど、一つしかないと考えている人は大勢います。
だけど、お笑いは反射神経ですからね。
自分と違う価値観の引き出しを多く持っていれば、いろんな局面に対応できるってこと。
そんなような教えだったのでは?と思っています。
劇団の中に、ずば抜けて面白いオトコがおりました。
だけど、30半ばで未だ鳴かず飛ばず。
「なぜ、売れないんですかねぇ?」と聞いてみたところ、大将が一刀両断。
「あれ、性格が悪いから」
ほー、性格ときましたか。
当時は、言ってる意味が分からなかったけど、今はそのこと、分かるんだなぁ。