私の母は、いい加減な人で、友人と連れ立っては、しょっちゅう出歩いておりました。
だから、専業主婦にも関わらず何故かカギっ子でした。
たまに家にいると、寝転がって一人テレビを見ながら、家中に響くような大声で笑います。
まったく、手本になりません。
これで「宿題やったの?」って言われてもねぇ。
しかしながら、一緒に電車に乗ると、沿線の駅名を覚えるように仕向け、機械の性能を試すようなことは、しょっちゅうやってました。
極めつけは、二つ上の姉との漢字バトルです。
おやつのクッキーを賭けて、二人の子供に同一部首の漢字をたくさん書き出せというタイムレース。“サンズイ”だとか“ニンベン”だとか。
そんなもん、二学年のハンディは大きすぎます。
ところが、私はそう考えませんでした。
これって、漢和辞典で先に調べておけばいいじゃん。
敵(姉)はプライドもなく、競争自体バカバカしいと思ってましたから、圧勝です。
かくして、私は積極的に予習する子供となり、勉強なんて簡単だと思うようになったのです。
(つづく)